第4話 勇者、“魅了”される

あちゃー、こりゃ支配系統の力だな……


俺もそういったものは持っているが、それを解くことはできない。


「皆もそれでいいよな?」

支配されている勇がそう言うと、


「おう!もちろんだ!」

と、龍斗。


「ええ、もちろん」

と、さくら。


他のクラスメイト達も次々に肯定していく。


どうやら全員、心が支配されているようだ。


だがその中でも、


「あ、わ、わたしも……やるよ」


そう言う白雪は支配されていないようだった。

“読心”で確認したから間違いは無い。


何故白雪は支配されていないのだろうか?


皇女が使っているやつには、何か条件があるのか?いや、其はないだろう……他のクラスメイトは全員が支配されている中、白雪だけ支配されていないのはおかしいからな。


じゃあ白雪はそういったものを無効化させる力を持っているのか?……うん、こっちの方がしっくり来るものがある。


頭の中で推測していると、全員が俺のことを見ていた。


「ああ、もちろん俺も『魔王』を倒すよ」

とりあえずそう言って話をあわせておく。そして、皇女の心を覗く。


(よし、なんとか“魅了”を掛けられた。……でも、何で“魅了”に掛からない奴がいるの?)


あー、この皇女、多分クソだな


そう思いながらもう一度勇を見ていると、ガンを飛ばされた……ような気がした。皇女の方から。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「では、《ステータス》を見せてもらいます」


「《ステータス》?」


先ほどは黙っていた藤牧が口を開いた。


「はい、それを説明するためには実際に見た方が良いでしょう。では、謁見の間に行きましょう」


「はい、分かりま――」


「ちょっと待ってください」


俺は勇の言葉を書き消すように、言葉を重ねた。


「どうされました?えーと……」


「神谷 陸です」


「すいませんありがとうございます。えーと、神谷様、どうされました?」


「謁見の間に行く前にいくつかよろしいでしょうか?」


「はい、構いませんよ?」


「では、お言葉に甘えて……何故、謁見の間に行かなければならないのでしょうか?ここで《ステータス》を見ることはできないのですか?」


「いえ、そういうことではありません。謁見の間では、私の父上達が勇者様方をもてなす準備をしています」


「もてなす、とは?」

もしかしたら薬物かもしれない


だがそこまで聞いて、

「おいっ!神谷!そろそろ迷惑だとは思わないのか!?」

と、怒鳴られた。


槍本 聡司 と言う男に。

彼とは今日初めてしゃべったのに!

第一声がそれかよ!?しかも“魅了”されながら!


まあ、これ以上の追及は怪しまれるな……。

少なくとも不信感は抱かれているし……とりあえず黙っとくか。


「そうですね、すいませんでした」


「いえいえ、構いませんよ。警戒するのは当たり前ですから」


でも内心は

(やっぱり!あいつは“魅了”に掛からない!?)

だ。


(目も会わせたのに……なんで?)


今の発言からして、“魅了”は皇女の目を見なければ掛かることはないことが分かった。


「それでは、謁見の間に行きましょうか」


しばらく無駄にでかい城のなかを歩き、さっきのとは全然違う大きな扉の前に着いた。


「では、父上の前に立ったら、右手を左胸に当てて頭を下げてください。そして、面を上げよと言われたら頭を上げてください。よろしくお願いします」


[はい分かりました]


勇がそう言うと、エリックとクロードは扉の両取手を握り大きく開いた。


中から喜びの歌のような音楽が流れ、俺達を祝福しているようにも感じた。


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