第3話 勇者召喚

意識が戻ると、そこは教室ではなかった。

俺は辺り見渡しつつ、クラスメイトの人数を数える。ちゃんと36名全員がいる。


少し安心だ。


俺達は全員、大理石で出来たような床に座っている。床には教室の床にあったと同じような模様が描かれている。


念のため、超能力をONにしておこう。


コツコツコツコ……


ん?何かが聞こえる……あの扉の奥か?


そう思い、部屋の奥にある大きな扉を見つめ、“透視”と“千里眼”を発動させた。


ん?三人……?走って来る……一人はドレスを着た少女。凄く美少女だ。右にいるのはタキシードを着た男性……そして、少女の左にいるのはローブを羽織った老人だ。


そこで俺は気付いた。……ここ……異世界か?


超能力があるぐらいだ……異世界があってもおかしくはない。


ラノベ展開とおなじなら、俺達は勇者とかそう言う類いとして扱われると思う。


しばらくして、さっき覗いた大きな扉が開かれた。さっきの少女達が走って入ってくる。


クラスメイトはドレスを着た少女達を凝視している。


少女は肩で息をしていて、少しつらそうだ。


シーンと静まり返った空間。


「えーと、貴女方は?」


イケメン学級委員長の天野 勇が、その空間に第一声を放った。


さすが学級委員長だ!


「あ、はい!……私はダリウス帝国第一皇女、シャルロッテ・フォン・ダリウスです。シャルとお呼びください。」


シャルロッテと言う美少女はこの国の王様の娘なんだとか……“読心”を使ってみたが、嘘は付いていない


「そして、後ろにいるタキシードを着たのが執事のクロードです」


クロードと呼ばれた男性は、右手を左胸に当て、頭を下げた。


「で、ローブを羽織ったのが宮廷魔術使のエリックです」


「…………」


エリックは無言で頭を下げる。


「シャルさん、クロードさんエリックさんですね。……えーと、ここは何処なんでしょうか?」


シャル達の自己紹介が終わったかと思うと、勇がクラス全員の疑問を肩代わりして言った。


ナイスだ勇!


「あ、そうですよね……何も説明も無いまま……申し訳ありません」


そう言って、シャルが申し訳なさそうな表情を浮かばせて頭を下げる。


「いえいえ、頭を上げて下さい……それで、ここは一体何処なんでしょうか」


「ここは勇者様方の世界とは異なる世界……アールスです」


「「「「「勇者?」」」」」


おぉー!クラス全員がハモったぞ!


「あ、その話もまだでしたね……すいません……その話の前に、この世界のことからお話した方がよいでしょう……ではクロード、頼みました」


「はい、畏まりました。シャルロッテ様……」


クロードの話によると、『魔王』が150年ぶりに姿を現したらし、〈人族〉が治めている領地に攻めているのだとか……


『魔王』は、〈魔人族〉と呼ばれる種族の中から現れ、〈魔人族〉を従え、自分達以外の種族を無差別に殺していく残忍で恐ろしい存在とされている。そして、〈魔人族〉の中でダントツに強い。


〈魔人族〉と〈人族〉では、〈魔人族〉の方が圧倒的に強いので、『魔王』なんて存在には到底勝ち目はない。


そこで、《勇者召喚》を使って俺達を召喚した。


「勇者を召喚し『魔王』を倒した」と、150前の歴史書には記されていて、しかも勇者には特別な力が備わっており、その力を使えば『魔王』を倒すことが可能になるらしい……とのことだ。


勇者様々だな。


そしてクロードが話終わり、シャルロッテが前に出る。


「勇者様方、どうかお力を貸していただけないでしょうか?」


「元いた世界には帰れるのですか?」


その問にたいして、シャルロッテは悲しそうに

「それが……帰る方法が無いのです。」


「……おい!それは……っ!」


龍斗が怒鳴ろうとするが、勇に手で制され押し黙る。


「少し、彼女の話を聞いてみよう」


そう言って、シャルロッテを見つめる。


「しかし、『魔王』の城には魔術書の類が多く保管されています。……もしかしたら、そこにあるかもしれません。元いた世界に帰る方法が記された魔術書が……」


「……そうですか………ならば、私が『魔王』を倒します」


ん?なんか違和感が……


そう思い、勇に“読心”を使う。






勇の心の中は真っ白だった。


あちゃー、こりゃ支配系統の力だろうな。


俺でもそういったものを解除するのは不可能だ。


まあ、明日には元に戻ってるだろう。こういうのはタイムリミットがあるからな

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