第6話「招き猫の会」-Chap.2
1.
海条王牙たち二人は、目的のビルへと向かった。
出発する前、移動手段について海条がある提案をした。
「なあ、バディアは確か瞬間移動の能力も持っているよな。それを使ったほうが早いとは思うけど、行き先は大都市で人が多い。街中で突然俺たちが姿を現したら、大騒ぎになる可能性もある。それほど遠い距離じゃないから、電車を使って行くよ」
「なるほど。確かにそうだな」バディアはすぐに同意した。
移動中、電車の中でブレインが一人はしゃいでいた。
「わあ!電車って初めて乗ったけど、人力を使わないでこれだけのスピードが出せるのね!しかも人をたくさん載せて。人間の科学技術はかなりのものね。すごいわ」
「ちょっと、ブレイン。人間をなめすぎてないか?」海条が反論した。
その後、目的の駅に着くまでブレインはずっと窓の外を眺めていた。
そして穂高市の中心駅、穂高駅に到着した。駅から目的のビルまでは歩いて向かうことにした。
駅の出口でビラを配っている数人の団体が居た。海条たちは出口でそのビラを受け取った。
ビラにはこう書いてあった。
「寝ているだけで収入を得る方法をお教えします!『招き猫の会』のセミナーに参加すれば、あなたも必ず楽してお金持ちになれます!誰でもです!楽してお金を稼いでもっと幸せな人生を送りましょう!セミナーは毎日開催しています。セミナーの参加予約は下記の番号もしくはメールアドレスにご連絡ください。セミナー開催場所:招き猫の会本部ビル3F」
ビラの端には簡単な地図も描いてあり、「招き猫の会」のビルの場所が示してあった。
そしてそのビルの場所は、三人が目的地としていた場所と一致した。
「ふむ。怪しげなビルの中ではこんなことが行われていたのね」とブレイン。
「よくある胡散臭いセミナーだな。甘い言葉に乗せられて参加したら痛い目見るやつだぜ、これ」と海条は言う。
「人間のやることはいまいちよくわからないわ。そんなにお金が大事な人がいるのね」とブレイン。
「ああ、こういう団体はどこにでもあるし、それに参加する人間もどこにでもいるもんだ」と海条は経験と知識から語る。
「ともかく、これは一つの手がかりにはなるわね」とブレインがビラを仕舞った。
二人は「招き猫の会」のビルに到着した。
入り口はガラス製の自動扉になっている。二人は中へ入った。すると、すぐにまた自動扉があった。今度は近づいても扉は開かない。扉の横にあるインターホンから女性の音声がした。
「当会の会員の方でしょうか。あるいは、はじめてセミナーに参加する方でしょうか」
二人は一度顔を見合わせた。そして海条が答えた。
「はじめてセミナーに参加する者です」
「そうしましたら、ご予約を済ませていますね?お名前をお教えください」再び音声が言った。
「・・・海条王牙です」
「海条さん・・・本日の予約リストには載っていませんね。申し訳ありませんが、予約をしたのちに再度いらっしゃってください。関係者以外は立ち入り禁止となっていますので」
「・・・はい」
ここで音声が切れた。
「ふむ・・・だめね」ブレインは言った。
「明らかに怪しいな。これならおそらく警察を名乗っても立ち入れなかったかもしれないな。しかし、警察なら強行的に突入もできただろうが・・・」海条は考えた。
「何か裏がありそうだな。俺らも強行突入する他ないな」
「そうね」ブレインも同意した。
「じゃあ、俺が変身して思いっきり扉をぶち破ろうか?」
「そんなことして中の者に気づかれたらまずいでしょ。私に任せて」ブレインは言うと、自動ドアに手をかざした。
ブレインが何かを念じると、自動ドアのロックが解除された。二人は手動でドアを開けると、中に入った。
そして警報のサイレンが鳴った。
けたたましい警報とともに1Fのいくつかある部屋のうちの一つから、トライブらしき怪人が出現した。
「やはり、トライブが関係していたみたいだな!海条戦え!」バディアがテレパシーで海条に伝えた。
「いわれなくてもわかってらあ!」海条は言うと精神を集中した。
すぐに海条の体を青い光が包み、紺碧の戦士の姿へと変身した。右手には大剣が出現した。
モグラのメンバー二体が前方と後方から詰め寄ってくる。
戦士は双方の敵との間合いをとりながら、剣を振るうタイミングを伺う。
前方の敵が戦士に向かって走り出す。モグラのメンバーは腕に装填されているドリルを手元に展開し、戦士に向かって突いてきた。
戦士はその攻撃を避け、すぐメンバーの背後にまわって剣で切りつけた。
切りつけられたメンバーが動きを止めているうちに、背後のメンバーが戦士にドリルで攻撃した。
「ぐあっ!」戦士は攻撃を食らった。
先に攻撃されていたメンバーが戦士の背後から腕を回して戦士の動きを封じた。戦士は身動きがとれなくなった。その隙にもう一体のメンバーがドリルで繰り返し攻撃する。
「ぐあぁっ!」戦士は数度の攻撃を受けて大きなダメージを食らいながらも、動く足で攻撃してくるメンバーを蹴り上げた。そして、背後から押さえているメンバーに若干の隙ができると、肘打ちで追い払った。
再び戦士は二体のメンバーとの間に距離を取り、様子をうかがった。
「はあ・・・二体は厄介だな」戦士が言った。
「海条!これを使って!」ブレインは両手を握るようにして合わせ、気を集中させた。すると手から光の玉が現れ、その光の玉を戦士に向かって投げた。
光の玉は戦士の体に吸収されると、次の瞬間戦士の体は二つに分身した。
「あれ・・・?」「あら・・・?」二人の戦士は不思議な現象に驚いた。
「それで一対一で戦えるわ。ただしその分パワーも半減するから注意して!」ブレインは説明した。
「なるほど!」「そういうことか!」理解すると、二人の戦士はそれぞれメンバー一体ずつと対峙した。
それぞれが剣を振るいメンバーに攻撃する。力は半減しても、最初から本気を出せば相手に劣ることはなかった。
メンバーを何度も切りつけて大ダメージを食らわせ動きを止めさせた隙に、二人の戦士は双方気を集中させた。
日本の剣が同時に輝きだした。
二人の戦士はどちらも高く飛び上がり、メンバーをまっすぐ縦に斬った。二体のメンバーの体は爆散した。
戦いが終わると、二体の戦士は一つに戻った。
「やったわね!」
「ああ!」
「予想通りの展開だったけど、だからこそ先にすすむのは危険ね。ここは一旦引き上げましょう」
「そうしよう。この先にどれだけの敵がいるか分からないからな」
二人はビルから出て、家へと戻った。
2.
海条とブレインが去った後の招き猫の会本部ビル。その最上階。
(侵入したやつらは、護衛のメンバー二体を倒して引き上げました)三体目のモグラのメンバーがある人物に報告した。(今、死体の回収を行っております)
「そうか。一度警察の人間どもがセキュリティを破って侵入してきたときは、訳もなく殺せたのだがな」
(ええ。今回の敵は少々骨があったようです)
「初めてだな、こんなことは。少々警戒が必要だが、面白くもある」その人物はニヤリと笑った。「最近、弱者をだまして金を巻き上げるだけではつまらなくなってきたからな。少しは腕の立つ者と手合わせするのはいい退屈しのぎになる」
(次またそいつらが侵入してきた場合は?)
「当然、歓迎して差し上げろ」人物は言った。
第7話へつづく
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