第12話 過去の事件
借りたファイルと、データベースから抽出した被害者3人の暴行事件を照らし合わせる。
「直近で、合致する事件は該当無いかぁ」
片瀬軸に場所と時間が重なる事件を見つけられるのではと思って調べてみたが、そう上手くいく事は無かった。同様に九山、雪村と検査したが、結果は同じだった。
関係者の名前も確認していく。交友関係、恋人、職場関係、出身地、どれも共通点は無い。
更に、ファイルから彼らのテリトリーでの犯罪をしらみつぶしに確認していく。窃盗・強盗・恐喝、被害者が関係しているのもが無いか。
かけた時間に反し、収穫は0だ。
となると、余計、御岳からの証言が欲しくなる。
スマホを取り出し、着信やメールチェックをするが、二葉からの連絡はまだ無い。後は、何処から攻めていけばいいのだろう。
御岳と連絡が取れたからといって、新情報が手に入る訳でもない。次の手を考えなければ。
「もう17時かぁ。行ってみるか」
片瀬の勤めていた飲み屋がそろそろ開店する時間だろう。腕を天井に向け伸ばし、大きな欠伸を1つする。
「お先に失礼します」
デスクにいた、課長と中西、瓜生に挨拶し、俺は署を後にした。
飲み屋街の真ん中に位置する雑居ビルの8階に片瀬の働いていたバー「Mr.」がある。日は傾いていたものの、まだまだここは出勤時間に近いようで、客もまばらだ。
「何だよ。オープン21時からとか」
そりゃ、バーだから19時に行くのは早いかなと思いながら来たものの、21時オープンとは、かなり時間を潰さなければならない。
何処で時間を潰そうかと考えながら、店に背中を向けようとした時、ドアが開いた。
「あ、お前も来ちゃったの?ダメだよー、営業前だもん」
姿を現したのは、山岸だった。
「な、な、なんでここに」
「あ、お前もオーナーに話を聞きたかったりする?オーナーはお忙しいので無理だと思うよー」
「山岸さん、またお仲間ですか?開店準備に間に合わなくなりますが、協力するのが善良な市民の義務なのでしょうから、全力でご協力しますよ」
店の奥から出てきたオーナーは、黒いスーツのよく似合う、スタイリッシュなインテリだった。シルバーの縁の眼鏡もピッタリだ。
無意識にだがイメージしてたのと違うし、山岸と並ぶと尚更、洗練された大人具合が比較される。
「こいつは、キャリアを目指す貪欲な神代夜一。俺の部下だ」
「階級は一緒なので、部下ではなく、ただの後輩です」
山岸の発言も軽く笑い飛ばしたオーナーは、俺の事も店に入れてくれた。
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