第11話 二日目②

署に戻り、俺はデスクに座り改めて事件を整理する。


一ヶ月半前にゲームセンターで死亡した雪村。半月後に死亡した片瀬、そして先日の片瀬。更に過去、恐らく一ヶ月半以上前に骨折した風俗店勤務の男。


共通点は、暴行など前科があるワルである事。日中、公衆の面前で首が曲がり死亡した事。犯人はおろか、証拠も全く見当たらない事。


この3人の接点はないだろうか。

俺は書類を並べ、見比べる。


九山はフリーター、片瀬は飲み屋勤務と、キャッチが仕事の雪村。共通点というものはないが、飲み屋街で繋がっている可能性はある。片瀬の店から聞き込みを広げていけば、接点が見つかるかもしれない。


次に、前科は暴行。これは3人に共通してある。


「暴行かぁ」

「どうだ?収穫あった?」


振り返ると、中西が立っていた。


「あったような、無いような」


ざっくりと進捗を伝えると、中西は黙って話を聞いてくれた。


「なるほど。山岸が言うのも一理あるな」

「中西さんも山岸派なんですか?!」


まさかと笑いながら中西は七三分けの髪を整える。


「不能犯は抜きにして、視点を変えるのは、いいポイントだと思うよ」

「視点ですか?」


コクリと頷くと、中西は発する言葉を選ぶように話し始めた。


「殺人方法が異常だと、人はそこに考えが集中してしまう。だが、視点を変えて、何故この人が被害者になったのか、を考える事で、新たな道が見えるかもしれないね」


山岸が言いたかった事は、これなのか。


「ま、俺の見立ては自殺だけどね。こだわりや疑問を持てるイチは柔軟性があって、素質があると思うよ」


褒められているのか、無駄な事をしていると言われているのか判断が出来ないまま、俺は中西にお礼を言った。


「視点を変えるかぁ」


3人の共通点かもしれない前科、暴行事件を調べるなら第2強行犯か。


「あんまり行きたくないんだよなぁ」


刑事第2課は、1課と違う雰囲気がある。というより、俺のいる1課2班だけが異色の雰囲気なのだが、とにかく居心地が悪い。


「1課2班の神代です。すみません、直近2ヶ月分の捜査資料を見たいのですが」

「はぁ?何の用?」


つっけんどんに返され、チキンなハートが壊れそうになる。


「あの、直近2ヶ月の・・・」

「マサキぃぃ!1課さんだぞ!!」


俺と同じくらいの年齢だろうか、マサキと呼ばれた男は、ペコリと俺に頭を下げた。


「解決分ですか?」

「は、はい」

「ちょっと待ってくださいね」


分厚いファイルが1冊、2冊、3冊と重ねらられてゆく。


「こんなに?」

「未解決の分は入ってないので、もっと沢山ありますよ」

「ありがとうございます」


この中に欲しいものが入っていますように。俺はファイルを受け取り、心から祈った。


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