第4話

翌朝、食事は自室で摂った。

慣れるまではという陛下の計らいで。よほど、私を食堂へ行かせたくないのだろう。

番と陛下は食堂で仲良く食事をしているという話は侍女から聞き出した。

私はカルラに入れてもらった食後のお茶を味わいながらこれからのことを考える。

地盤固めとしてお茶会を開くのは必要だろう。

それと番とも会ってみたい。どういうタイプか把握しておく必要もある。願わくば御しやすい人間であるように。

「陛下に挨拶がしたいのだけど。昨日は陛下が忙しくて挨拶できなかったから」

「確認してまいります」

エウロカが確認し部屋を出て行った。それからすぐに戻ってきて彼女は申し訳なさそうに言う。

「申し訳ありません。陛下は忙しく、時間が取れないそうです」

「そう」

つまり会う気はないと。

婚姻式は一週間後。それまでに一度くらいは顔合わせがあるだろうと思った。ところが私の認識は甘かった。

陛下は結局、婚姻式まで姿を見せなかった。

婚姻式で会った彼は金色の髪にコバルトブルーの瞳をしていて、とても女性受けしそうな優男の印象だった。そんな彼は終始不機嫌顔。

婚姻式も形ばかりで、誓いのキスすらしなかった。


◇◇◇


婚姻式の翌日、私は一人で朝を迎えた。そう、一人だ。

結婚初夜、彼は来なかった。来ないという知らせもなかったので私は寝ずに彼を待つことになった。何て気の利かない男だ。

寝不足のせいで気分が悪いので朝食はお茶だけもらった。

「ねぇ、陛下に会いたいのだけど」

「申し訳ありません、陛下は忙しくて」

視線を向けたエウロカからはお決まりの言葉が出てくる。

「そう。愛人と会う時間はあっても正妃と会う時間はないのね」

「愛人だなんて!」

私の言葉にヘルマが反応した。視線を向けると彼女からは怒りの感情がひしひしと伝わって来る。

「ユミル様は陛下の番です!陛下の唯一の存在です。そのようなお言葉は慎んでください」

へぇ~、番はユミルって言うんだ。

しかも、ヘルマは番を名前で呼べる仲なのね。宰相も他の侍女も「番様」と言うだけで名前呼びはしていなかった。

独占欲の強い獣人の中には自分以外の者が番の名前を口にするだけでも許さない獣人がいると聞いたことがある。まぁ、番が名前呼びを許したら仕方がなく許可するとも聞くけど。

そして竜族は獣人族の中でも独占欲が強いと聞く。早くもヘルマがボロを出したと考えてもいいのかしら。

「ヘルマ、あなたこそ口を慎みなさい。誰に歯向かっているのか分かっているの?」

威圧するように言えば、ヘルマは僅かに後ずさる。

「愛人でなければ側室ね。ヘルマ、他の侍女たちも肝に銘じておくことね。あなた方が陛下に命令されて仕えることになった主人はこの国の王妃よ」

「っ」

ヘルマは悔し気に唇を噛み締めた。

カルラは瞠目をして、エウロカはヘルマの無礼を謝罪した。彼女が侍女の中で一番上だものね。統括する立場にいるのだろう。

観察する限り、エウロカが指示をだしているようだし。

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