第3話

「専属侍女のカルラです」

水色の髪をハーフアップにした女性が一礼する。

「エウロカエルです。エウロカとお呼びください。殿下」

くすんだ金髪の吹けば飛ぶような女性が一礼する。

「ヘルマです。殿下」

部屋に入ってまず最初に私の専属侍女を紹介された。たった三人だけの侍女だ。ふざけている。しかもエウロカはジュンティーレ公爵の正妻。

けれど警戒すべき侍女は全員と考えた方が良いだろう。きっとジュンティーレ公爵が用意した侍女だろうから。

「エレミヤ・クルスナーよ。よろしくね。それにしても随分と少ないのね」

私の言葉に侍女三人は追及を逃れようと視線を逸らす。

「これは陛下の采配です。否を唱えない方が御身の為かと」

代わりに答えたのは侍女の紹介まで手を回してくれたフォンティーヌだった。

「そう」

「それとお食事はお部屋に運ばせていただきますね。長旅でお疲れでしょうし、暫くは慣れるまで大変でしょうから食事はお部屋に運ばせていただきます」

「それも陛下の計らいかしら?」

私の言葉にフォンティーヌは何も言わなかった。けれど深められた笑顔が全てを物語っていた。

「そう。素晴らしい計らいね。最初からここまで過保護にされると私、甘すぎて胸焼けを起こしてしまいそうだわ」

ふざけている。どこまでも、馬鹿にして。

政治というものをまるで理解していない愚王。お姉様の言う通りね。

「今日はありがとう。明日からよろしくね」

疲れたから私はこのまま休むことにした。

侍女三人とフォンティーヌは私に一礼して部屋を出て行った。三人を見送ってから私は窓辺の椅子に腰かけて情報を整理する。

まずクルトは間違いなく王側の人間。ただどうも常識知らずの馬鹿みたいだから派閥とかは関係ないだろう。番がいるのに番ではない女を正妻に向かえないといけない陛下を哀れに思い、そのことから私を敵視しているだけだ。

竜族というのは元々頭はあまり良くない。力で全てが解決できてしまうから、物事を深く考えことを放棄した結果だと揶揄されている。彼はその典型だろう。

問題はフォンティーヌ。彼は立場がよく分からない。私の味方ではないけど、敵でもない感じがした。

次に侍女三人だ。全員が公爵の息がかかっているとは考えにくい。

普通に考えて公爵の正妻であるエウロカが怪しいけど、仮にも摂政を務めている男がそんな分かりやすい駒を使うだろうか。

それも女は政治に関わらないから馬鹿だと思っている馬鹿な男の脳みそを持ったうえでそんな駒を使っているのか。

ここで考えても答えは出ない。常に身近にいる侍女にスパイがいるといろいろとやりづらい。すぐにあぶり出しをしなければ。

取り合えず定時連絡を国にして今日は休んだ。

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