第25話 後輩…③

 話しを終わらせるほのか。


 勿論、達也に異論はない。


 怒られるずに済むのであれば、どうでもいいからである。


「と、ところで、達也君…」


「…………」


 明らかな話題逸らし。


 無論、そんな事を気にする達也ではないし、からかったりする達也でもない。


 何ですか?と、尋ねる達也に対し、可愛わざとらしく咳をしながら、ほのかは尋ねる。


「GW中の部活についてなんだけど…」


 本をパタンと閉じながら、ほのかは尋ねた。


 大事な話しだよ?という意味だろうと受け取った達也は、ほのか同様に本を閉じる。


「部活って、やるんですか?」


 やるんですか?ではなく、休みだろ?と、言いたいところなのだが、仮に休みであれば、GW中の部活は休みだから。と、ほのかなら言うハズなので、達也はやるんですか?と、尋ねた。


 勿論、やる意味があるのか?という意味も含まれており、ほのかはその意図に気付いていた。


「えぇ。考えたのだけれど、冬美先生が言ってたでしょ?今年から忙しくなるって」


「…本当かよって、ツッコミたいところですけどね」


 今年から忙しくなるのだから、このままというわけにはいかない。


 そうほのかが考えての提案だろうと受け取った達也は、大丈夫だろ?という意味を込めながら答えた。


「そうね。けど、もしも忙しくなった場合を考えたら、何もしないわけにはいかないと思うのだけれど」


 これは、部長としての考えである。


 佐倉ほのかとしての考えを言うのであれば、一緒にいたい♡という考えきもち一択であった。


(卑怯なのかもしれない。で、でも…私は決めたんだ)


 何とかして、今年中に達也と付き合う。


 その為には、手段など選ばない!と。


 そもそも、部長という権限を使ってメアドをゲットしたり(未だにメールをした事はない)下の名前で呼んだり(その結果、部長と部員という関係になってしまった)色々と卑怯な手を使っているほのか。


 しかし、恋する乙女に限らず人を好きになった人は、少しだけ卑怯になってしまうものではないだろうか?


 友人を使っての聞き取り調査や、わざと同じ班になったりなどなど。


 いのりとの一件があってから、ほのかは少しだけ前に進む決意をしていたのだった。


「……何かするって言っても、何をするんですか?GW中に相談に何か来ませんよ」


 部長としての体裁を保ちたいのだろうか?


 いや、佐倉はそんなヤツじゃないハズだ。


 部長としてではなく、相談部の一人としての提案だろうと考える達也。


 立派な心がけであるとは思うものの、賛同するかはまた別問題である。


 グサッと、何かが刺さってしまう錯覚に陥るほのか。


 言われてみればその通りの話しだからだ。


「…け、けど、来た場合も考えられる。でしょ?」


 自信無さ気にほのかは尋ねる。


 やましい気持ちがあったからだ。


 その態度を見て、チクッと何かに刺される錯覚を覚える達也。


 部員としての自覚はあるんですか?笑


 そう聞いてきたように感じたからだ。


 その場合…はて。


 ありません。などと言えるだろうか?


「そ、それに…ほら?」


 と、言いながら、ノートパソコンを開くほのかを見て、先日の冬美の言葉を思い出す達也。


 達也が思い出したのは、相談に来づらい人の為にと冬美がPC部に作られせたサイトの事である。


「……きてるのか?」


「えぇ。多いわよ」


「……そんなに悩んでんのかよ」


 正直に言えば、達也は冬美を疑っていた。


 悩みがある生徒はいるとは思うものの、相談なんてこないと思っていたからであり、メールもしないだろうと、考えていたからである。


 それこそ、友人を頼るべきなのではないのだろうか?


 しかし、ぼっちである達也には、自分の考えが正しいのかどうかが解らなかった。


「そうね。冷やかしもあるのかもしれないけど、ざっと見ただけでも50件はあるかしら」


「……!?って、多すぎじゃねぇか‼︎」


 あまりの多さに、驚きが隠せなかい達也。


 もしも口に飲み物を含んでいたら、ブッフー!!と、吹き出してしまっていただろう。


「……そんなわけで達也君。悩みがこれだけきているのだから、GW中の部活についてなんだけど」


 一つ一つが本当の相談かどうか、達也にもほのかにも分からない。


 しかし、本当の相談だったとしたら?


 二人にそういった会話はなかったが、気持ちは同じであった。


「…いや、実はだな」


 言いづらい空気になってしまったぜ。と、思いながらも、達也は口を開く。


「バイト先で、ちょっと色々あって…」


「……!?」


 つまり、GW中の部活は難しい。と、普通は思うかもしれないが、恋する乙女ほのかに、そういった考えはなかった。


 バイト先。


 ちょっと色々あって。


 二つのワードが、ほのかの心をかき乱す。


(バ、バイト先…。知る、チャ、チャンスだわ)


 しかし、ここでふと気付く。


 仮に知った場合、達也の職場にバイトの応募をしたとして、さて、自分は何と説明するべきだろうか。


『初めまして。今日からコチラで働く事になりました、佐倉ほのかです』


『さ、佐倉!?新人って、佐倉だったのか』


 と、なるのは間違いない。


『な、何でまた…ウチなんだよ?』


 と、なった場合、さて、どう説明すべきか。


 また、万が一バイトに落ちてしまった場合、達也が履歴書を見る可能性がある。


 つまり、部長と部員。クラスメイトということプラス、バイトに受かった者と落ちた者ということになるのだ。


 それだけは避けたい。


 け、けど、バイト先で色々あってなどと言われたら、何があったのかが聞きたくてしょうがない。


 こ、告白された…とか。


 いや、もしかしたら既に付き合っていて、バイト先で色々あってとはつまり、バイト先の子と色々あってということではないだろうか?


「あの…さ、佐倉部長?」


 考え込むほのか。


 ほのかが黙ったままの為、重たい空気が部室内を蹂躙していた。


 マズ…イ。


 何とかせねば…。


『嫌われる/怒られる』


 二人の気持ちはバラバラであった。

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