第12話 相談部活動記録 その壱…③

 相談部がついに動き出した。と、どこぞの作家ならそう書くのかもしれないが、勿論、そんな事はない。


 では、相談部にとって、初めての活動なら正解なのだろうか?


 いや、それも違う。


 何故なら、達也もほのかも部活動としてこの部室に何度も訪れ、相談に備えていたのだから、それは活動といっていい事だ。


 なら、正解は何なのかと達也は考える。


「良〜し!記入は終わったかね?」


 そんな達也の思考は、冬美のこの一言で終わりを迎えた。


「相談内容は覚えているな?」


「合宿をする事になったのですが、女子も盛り上がるような遊びって何かありますか?という相談です」


「そうだ。桐原は…大丈夫そうだな。では!一斉にオープーン」


 ダッタラ〜♬っと、楽しそうに効果音をつける冬美。しかも、音楽などではなく地声でだ。


 一応、相談なのだから、もう少し緊張感ってモノが必要じゃないのか?と、達也とほのかは思いながらも、ボードをオープンする。


 相談内容


「この度 合宿をする事になったのですが、女子も盛り上がるような遊びって何ですか?」


 解答者 佐倉 ほのか


「まず、何処に行かれるのですか?それが判らない事には、こちらとしても返答のしようがないですよね? 笑」


 解答者 浅倉 冬美


「ふむ。まず君は何部だね?それが判らない事には答えてやれんよ」


 解答者 桐原 達也


「恋するウサギさん。結論から言っておきます…どうか諦めて下さい。女の子を楽しませるだなんて、無意味な事ですよ?何でもいいよ〜とか言っておきながら、は?それはないわ〜とか言ってくる、不思議な生き物なんですから」


 と、書いたボードを見せ合う三人。


「おぉ⁉︎ほのかは私と同じ意見のようだな」


「そうですね。普通はこう思うはずです」


「なるほど。そう思わなかった俺は、天才だということだな」


「……ソウデスネ」


「棒読みをやめろ。つか、二人のはアドバイスでも何でもねぇじゃねぇか」


「アドバイスよ?何を言ってるのかしら?」


「どこがだよ!大体、(笑)って何だよ」


 相談者がコレを見たらどう思うか…うん。俺なら泣いちゃうm(__)m


「まぁ、落ち着きたまえ。では、実際にやってみるとしよう」


「……?」「……は?」


 やるって、何をだよ?と、二人は思った。


「簡単な話しさ。書いた理由を説明し合っていく。な?簡単だろ?」


 普通の人なら、簡単なのだろう。


 しかし、この部の二人は普通ではない。


 コミュ障の二人である。


「安心したまえ。まずは手本として、私からやってやるからな。では、説明しよう」


 冬美の説明はこうだった。


 今からやるのはロールプレイングといって、実際、会社などでも行われているらしい。


 実際の状況に対して、自分はきちんと対応できているのかを発表し、アドバイスをもらうなり、逆にアドバイスを送るなりしてお互いのスキルを高めあっていくのである。


 スキルUP…経験値UP。


 な?正に、ロールプレイングだろ?


「君達は相談部員で私が恋するウサギちゃん役だ。相談にやって来たウサギちゃんに対し、君達の対応力を是非見せてくれ」


「…分かりました」


「手本って、そっちの手本なんっすね…あ、いえ、大丈夫です」


 普通は逆だと思うだろ?残念。


 浅倉冬美は普通ではないのだ( ´∀`)


「良し。早速、始めようか」


 そう言って部屋の外に出る冬美を、二人は無言で見送るのであった。


 ーーーーーーーーーーーー


 コンコンと、部室の扉を叩く音を耳にした二人は、自然と顔を見合わせた。


 達也くん。ほら?というほのかの表情に対し(達也主観)部長の仕事だぜ。ほのかなら出来るよな?(ほのか主観)という達也の表情。


「…どうぞ」


 負けたのは、やはりほのかであった。


「し、失礼するでおじゃる」


「………」


「こ、ここに、座ればいいのでおじゃるか?」


「………」


「むむむ。無視はよくないでおじゃる」


「…あの?どういう事ですか?」


 訳が判らないと、堪らず声を掛けるほのか。


 急に変な喋り方をし出すのだから、当然である。


「はぁ…仕方がない。良いか?必ずしも恋するウサギちゃんが普通の喋り方をするとは限らない。それに対して君達は、ゴミを見るような眼を向ける。さて、相談部として以前に、人としてどうなのかと、私は言いたいね」


「…すいません」


 ぷくーっと頬を膨らませる勢いで、冬美が両腕を組んだ事に対し、ほのかは謝罪する。


 ここで言っているのは対応力。


 いや、ロールプレイング自体、対応力を見る事なのだから、対応力が出来ていないぞ!と、冬美は言っているのだろうと、達也は思った。


「…ちなみに、モチーフは誰っすか?」


 そのキャラ設定の元は誰かと訊ねる達也に対し、冬美は"ニン、ニン"と言いたげなポーズをとりながら、迷う事なく告げる。


「冬美・バジーナでおじゃる」


「……はぁ」


 俺の先生がこんなに可愛いわけがない。と、達也が思ったかどうかは、達也本人にしか解らない事である。


 しーん。とする部室内。


「おほん。最初からやり直すから、最後までやり通してみたまえ」


 コレではスベったみたいではないか…と、冬美はワザとらしく咳を吐き、部屋の外へと向かう。


「達也君…」


「あぁ。安心しろ」


 俺がついてるから。


 大丈夫。


 お前なら出来るさ。


「………?大丈夫か?」


 脳内を駆け巡る達也との妄想に顔を赤くしたほのかを見て、そんなにロールプレイングが嫌なのだろうか?と、達也は心配の声をあげるのであった。

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