「講堂のど真ん中で」

「…ジョン太、ジョン太じゃないか。

 どうしてこんなところで倒れてるんだ?」


そこは円形の講堂のような場所で、

気がつけばジョン太は床のど真ん中で

大の字になって倒れていました。


空中にはいくつものスクリーン式の立体映像。


映っているのはジョン太の乗っていたバスや

見たこともない大きな学校のような施設、

こぼれる砂やバスの中にいるジョン太の映像が流れています。


そして、起き上がるジョン太の隣には、

バスの中で会った青年…


ヨシローと呼ばれていた、

高等学校出身の青年が驚きの表情で立っていました。


「えっと…ここは?」


自分がどうしてここにいるのか訳が分からず、

周囲を見渡すジョン太。


周りにはヒゲの生えた人やメガネをかけた女性など、

たくさんの大人が皆一様に驚いた顔で

席にすわりながらジョン太を見ています。


その机の上には『理事長』だの『市長』だの『警察署所長』だの、

なんだか面倒くさそうな肩書きの名札が並んでいますが、

彼ら彼女らの顔つきはなぜか不気味に似かよっている気がして、

ジョン太は何だか嫌な感じを覚えます。


「どうしたんだよ、

 みんな心配していたんだぞ。」


胸につけていたポータブルマイクをはずし、

ジョン太にかけよるヨシロー。


彼の近くの画面には

『バス内で起きた事故の経緯及び関係者の証言』と

書かれた難しそうな文言が浮かんでいましたが、

どうやらヨシローが周りの大人たちと大切な話し合いを

している最中だったことだけはわかります。


「ジョン太が急にバスからいなくなって、

 俺も経緯を説明するためにここに呼び出されていたんだが、

 …そんな事よりも大丈夫か、ケガはないか?」


心配してくれるヨシロー、

ですが、そこに声がかかります。


「…もしかして、彼が行方不明になった

 サイトー博士のお孫さん?」


みれば周囲にいた大人たち…似たような顔ぶれの中にいた、

『市長』という名札を見せつけるメガネにスーツ姿の女性が

いぶかしげな顔をしつつも立ち上がり、声をあげます。


「その子が、そうなの?」


それにヨシローはうなずき、

「ええ、そうです」と答えます。


「『宇宙と空間の島』に連れて行かれたと

 考えられていた、ジョン太です。」


ジョン太は何のこっちゃと思いながらも

ヨシローにうながされるままに、

近くの適当な席に座ることにします。


そこで気づいたのですが、

ジョン太が先ほどいたステージの中心部には、

この場所のシンボルなのかコンパスと学制帽を

組み合わせたエンブレム…


『国立青少年学習機構』と読める

おしゃれなロゴが大きく描かれていたのでした。

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