「僕たちは一心同体」

「さ、僕についてきて。に必要なのは人手なんだから」


 もう一人のジョン太に手を引かれるままに、とまどうジョン太は草をかき分け進みます。急に視界が開けたかと思うと青空の広がるぽっかりと森の開けた空間に足を踏み入れました。


「ここは、ちょうど島の真ん中にあたるところなんだ。ほら、今まで渡っていた川はここから湧き出た水が低地へと流れ出したものなんだよ」


 手を引くジョン太が指し示したのは、こんこんと水が湧き出す岩場。人工的なものなのか円形に石が敷きめられ中央の穴からは水があふれ出しています。


「人が作ったものなのは確かだろうね。ここにいた先住の誰かが作ったものなのかも。でも、ここにいるのは今のところ僕たちだけだし…ほら見て」


 言うなり、岩場から少しくだったところでジョン太は息をのみました。

 何十人という白いパーカーと半ズボンのジョン太がいました。


 彼らはジョン太と同じく不器用らしく、カゴからたくさんのアケビをばらまいたりようやく捕まえたカニに指をはさまれたりしているようです。


 でも必死にこの島で生き抜こうとしているのか地面や木の皮に下手くそな地図をかいているジョン太やゴザらしき物体を編んでいるジョン太もいます。


「彼らはみんな『ジョン太』だ、なぜ増えたかはわからない。でも、みんな一致団結してこの島で生き延びようとしている。そのために一人一人が役割を決めて効率よく働いていかないと…その良い例が、あの大きな家だよ」 


 そう言ってジョン太が指さした先には、豪邸とまではいきませんが、板で周囲を囲った大きな平屋建てがありました。


「あれが僕らが作った家…と言っても、浜辺の船板を古クギで適当に打ち合わせたものだから急な雨風があったときには雨もりするかもだけど…でも、大きさだけは立派なものだし、今後の補強次第できっとどうにかなると思ってるよ」


 胸を張りながらも、なんだか不安なことをのたまうジョン太。


 その雰囲気を感じ取ったのか、気をとりなおすように咳払いをしたジョン太はあらためて平屋の先にある森を指さしました。


「ほら、あの森から僕らの仲間がやってくる」


 みれば、木々のあいだから不安そうな顔で出てくるジョン太とどこか得意げに手を引きながら説明するジョン太がやってきます。


「ああやって森の中を彷徨っている僕を『教育係』が見つけて連れてくるんだ。皆、最初は不安な顔をするけど、すぐにこの環境に慣れていくよ。かくゆう僕も『教育係』だが…さ、もう時間がない。『採取班』が君のように迷っている仲間を何人か見つけているからね、彼らに話をしないと…」


 自分を『教育係』と呼ぶジョン太は坂を下りながら手を引き、何もわからないジョン太を十人以上いるグループの中へと連れて行きます。


「僕らジョン太は島を生き抜くためにそれぞれの役割を持って仕事に励まなければならない。君はこれからこのグループに属することになる…大変かもしれないけれど、これもパトリシアのためだと思えば頑張れるだろ?」


 そう言って、もう一人の自分に対しウインクを残す『教育係』のジョン太。

 

 その言葉に後押しされ、ジョン太はおそるおそる『教育係』の勧めるグループの輪へと入りました…

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