「だれのために仕事をするか」
『教育係』に連れてこられたジョン太を見るなり、広場で植物の皮をはいでいたジョン太はため息をつきました。
「あーあ、また僕の犠牲者が増えていくのか」
しかし、それを見ていた『現場監督』のジョン太が怒鳴り声をあげます。
「こら、そこの『編み物係』、手を休めるんじゃない!日暮れまでにハンモックを100枚分編む必要があるんだぞ。出来てるのは36枚、100枚を目指すんだから…えーっと、少なくともあと64枚分の縄が必要なんだぞ!」
『現場監督』のジョン太は枝で地面に必死に計算式を書きながら声を上げます。
その周りにはハンモックのために木の皮をはいだり、いらない部分をそいで、縄にするジョン太の姿がありましたが、みんな『現場監督』のジョン太の横柄な態度やいつまで続くかもわからない単調な仕事にすっかり嫌気がさしていて、口々にため息をついては文句を言います。
「でも、カントクー。本当にこれで今日中に100人分も作れるんですか?僕は無理だと思いますよー?」
「そうですよー、もう皮を叩くのに手が痛くってヤンなっちゃいますよ」
不器用に縄を編むジョン太や木の皮を叩くジョン太の不服そうな言葉を聞き、『現場監督』のジョン太は地団駄を踏みます。
「なんだと、僕の言葉が聞けないのか?僕は『編み物係』の現場監督なんだぞ!この中でも偉い立場なんだぞ?」
さらに怒る『現場監督』のジョン太ですが、振られた役割が上滑りするだけで、誰がどう見てもみんなと同じダメなジョン太でしかありません。
「あー『教育係』といい『現場監督』といい、何でこんなに偉そうなのか?」
木の皮をはぎながら、一人のジョン太がため息をつきました。
ぶつくさ言うヒマがあったら作業をしていた方が良いのですが『編み物係』となったジョン太たちは完全にやる気をなくしてしまっているので、どうあがいても日暮れまでに作業が終わらないことは目に見えていました。
「…そう言えばさ『パトリシア捜索班』はどうなったんだろうな」
植物を叩くジョン太がポツリともらすと縄をゆうジョン太が首をふりました。
「帰ってこないところを見るとまだ成果は出ていないようだよ。でも、僕が探せば見つかるかもだけど」
「そう言って、率先して森に探しに行っていたのが『パトリシア捜索班』だってことを忘れるなよ」
仲良くため息を繰り返すジョン太たち。
彼らの頭の中にあるのは愛しいもふもふのパトリシアのことばかり。
でも、愛犬のために自分たちはこうして寝床も食料も日暮れまでに確保しようと頑張っているのですが…やる気がない以上、思うように手も進みません。
「あーあ、パトリシアー」
泣きそうになるジョン太たちを『現場監督』のジョン太は叱り飛ばします。
「コラー、僕だって一刻も早くパトリシアに会いたいんだ。仲間のじゃんけんに負けたからここで『現場監督』をしているんだ。だから、さっさと終わらせてよパトリシアを探させてよ…あーん!」
突然プツンと糸が切れたように泣き出した『現場監督』のジョン太。
それに呼応するかのように、編み物をするジョン太もボロボロと涙を流します。
「そうだよ、僕らだってパトリシアに会いたいんだ…ぐすん、ぐすん」
こうして慣れない作業のストレスから『編み物係』の現場は涙を流すジョン太であふれかえってしまったのでした。
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