6.たまの休みとジャパリパン

「明日、最近知り合ったフレンズんとこに遊びに行く約束しちゃってさ。修行は無しってことで頼む。いきなりでごめんな」


 今日のパトロールを終えてししょーの四角い寝ぐらでだらだらしていたら、急に明日がお休みの日になった。ハチミツ味のジャパリパンを探しに行くチャンスだ。


「サーバルも一緒に会いに行くか?」

「いや、わたしもちょっと用があるんだ」

「そうか。んじゃ明日はお互い別行動ってことで。朝飯食ったら出てくけど、夕方にはここに戻ってくるから」

「はーい」



 次の日。ししょーが出かけたあと、慌てて準備してすぐにジャパリパン探しに出発した。



「全然見つからないよ……どうしよう」

 ひたすら走り回って、いろんなフレンズに声をかけて、それでも見つからない。もうすっかり夕方だ。ししょーも巣に帰ってきてるころだろう。

 もうどうしようもなくなって、道のわきに生えてる木にもたれかかってぼんやりしていた。帰らなきゃなあ。ため息をついた。


「どしたのぉ?」


 顔を上げたら、このへんでは見かけないフレンズが心配そうにわたしを見ていた。


「なにか困りごと?ァたしでよがったら話聞くよぉ」

「ありがとう……。えっとね、ハチミツの味がするジャパリパン探してるんだ。だけど、全然見つからなくて」

「なんで探してるの?」

「わたしの大切なフレンズが、ハチミツ大好きなんだ。だからジャパリパンをあげて、その子に感謝の気持ちを伝えたいの」

「なるほど、プレゼントってやつだにぇ〜。そういうことなら、これあげるよぉ。ひとつしかなくてゴメンねぇ」


 そう言って目の前の子が取り出したのは、甘い香りがするジャパリパンだった。


「えっ⁉︎本当にいいの⁉︎あなたの大切なものとかじゃ……」

「ン大丈夫大丈夫〜。さっき友達のおうちで紅茶……えっと美味しい飲み物飲んでたんだけど、友達が用意しててくれたんだよぉ。これはその残り。あとで食べようと思って持ってきたけど、こんな友達思いなお話聞いたらねぇ。ァたしはさっき充分食べたからぁ」


 心優しいフレンズのおかげで、ししょーの大好きなハチミツ味のジャパリパンをついに手に入れたんだ!

 たくさんお礼を言ったけど、その子は「いいよぉ気にしなくてぇ」と自分のすみかの方へ帰っちゃった。名前も聞きそびれた。



 あとはとにかく急いで帰ってししょーに「ぶれぜんと」するだけ。もうすっかり夜になっちゃったし、ししょーもわたしのことを心配してるかもしれない。


 寝ぐらの方へ走っていたら、なにかおかしいと感じた。

 その答えはすぐにわかった。ししょーの寝ぐらの方向に光が見える。いや、寝ぐらが光ってる。でも、その光はぼんやりしている。


「……嘘だよね?」


 慌ててそっちへ向かって走る。

 ただ光ってるだけならよかったんだ。ししょーが明かりをつけているだけ。


 違う。

 足が震える。

 動物のころにはかかなかったような冷たい汗が背中をぬらす。



 セルリアン、わたしよりもひと回りもふた回りも大きいセルリアンが寝ぐらを飲み込もうとしている。その様子がありありと光に照らされていた。

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