3. 夜話と別れと再訪問

 うみゃうみゃ言いながら明かりをいじるサーバルを一喝し、あれこれ話を聞いたところ、数日前に気がついたらこの草原にいたらしい。

 それ以前は家族と一緒にいたような気がするくらいしか覚えておらず、自分がサーバルキャットというけものであったことを除けば、ほとんど記憶がないようだ。あたしの予想通り、この前の噴火で幼獣がフレンズ化したのだろう。


「生まれたばかりだし、勝手がわからんこともたくさんあるだろ?まあ、その、なんだ。困ったことがあったら、あたしのとこに来ればいい」

「普段はどこにいるの?」

「そうだな……。天気のいい昼間は結構遠くまで行くが、夕方か夜にはここに帰ってくるぞ。暑いのが平気なら中に入って待っててもいい」

「わかった!もう入り方も出方も覚えたから暴れないよ!」

「まったく、なんで入れたのに出れなかったんだろうな」


 会話をしているうちに夜も更けてきたようだ。昼間歩き回ったうえに夜は生まれたてほやほやのフレンズの面倒を見たので、流石に眠くなってきた。欠伸が出る。


「ふゎ……あくびもらっちゃったよ」

「お前も眠いんだろ、今日はウチ泊まってきな。この寝ぐら固いから、けものや小型のセルリアンは簡単に入ってこない。安全だぜ」

「その、セルリアンっていうのは、なんなの?」

「セルリアンってのは、モノを壊したり、フレンズを襲ったりする厄介な奴だ。セルリアンに食われると、死にはしねえがけものに戻っちまう。そうなったらもうダチでもなんでもねえし、あたしがけものに戻ったらお前のこと食っちまうかもなハハ……って寝てらこいつ」


 サーバルは警戒心というものを全く持たない様子で寝ている。寝つきが良すぎる。こいつがけもののままだったらどのみち早死にしてたから、フレンズ化して命拾いしたのかもしれないな、とか考えてたら、あたしも、頭が回らなく、なってきた。おやすみ。




 翌朝、いつまでも寝ているサーバルを叩き起こし、普通の青いボスが持ってきたじゃぱりまんを二人で食べた。


 腹ごしらえも済み、サーバルもそろそろ出ていくようだ。ナワバリが決まっていないから、いい感じのところを探すらしい。


「んじゃ、昨日も言ったけど、なんかあったらあたしのとこに来な。相談なら乗ってやる」

「ありがとう!ほんとに助かったよ!また遊びに来るねー!」

「"遊び"って……。まあいいか。じゃあなー」


 サーバルは元気よく駆け出していった。やれやれ、やっと落ち着かないのがいなくなったか。とは言えちょっと心配だが。まあ、元気のある奴だし、うまいことやっていくだろう。


 さて、あたしは今日は何をしようか。とりあえず寝ぐらの中を見て、サーバルが何か変なとこをいじってなかったか確認しなければ。それが終わったら適当に出かけよう。




 寝ぐらの下の方に入れてある、思い入れのある拾い物の数々(キラキラした玉とか、薄っぺらくて茶色い柔らかい板とか、色々ある)を見てたら、そこそこ時間が経っちまったようで、太陽の位置が少し高くなっていた。


「あちゃー、夢中になりすぎたか」


 今日は遠出せずに近場の散歩で済ませようかと考えていたら、妙な音が聞こえてきた。


 ああ、これは誰かが全力疾走してる足音か。駆けっこでもしてんのか?そう思ってドタドタガサガサと音のする方を見ると。




「うみゃああああああああ!!!!!」


 おいおい、戻ってくるのが早くないか?




「————!!!(ずもももも)」

「たすけてええええ!!!!!」


 確かに困ったらあたしのとこに来いとは言ったが、セルリアンまで連れて来いとは一言も言ってないぞ!散歩は中止だ、まったく!

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