2. ドジな仔猫と室内灯

 突然の来訪者に寝ぐらを荒らされて呆然としていると、さっき追い越したボスが後ろからやって来た。フレンズがいることに気づいて、じゃぱりまんを配りに来たところだったようだ。


「まあいい、話は後だ。まずは飯を食って一旦泣き止め〜!」


 あたしが壁に手を掛けて出口を開けるやいなや、そのフレンズは一目散にボスに飛びかかり、じゃぱりまんを掻っ攫った。


「た、助かった〜」

「落ち着け、ボスもビックリしてるだろ」


 じゃぱりまんを勢いよく頬張る彼女を前に、ボスは戸惑ったように小刻みに震えていた。災難に遭っているのはあたしだけではないようだ。



「助けてくれてありがとう。えっと、私はサーバルキャットのサーバル!」


 サーバルもじゃぱりまんを食べ終えたところで、寝ぐらのイスに座って、まずは自己紹介だ。


「あなたは?」

「あたしはラーテル。このへんがあたしのナワバリで、ここが寝ぐら」

「やっぱり……。勝手に入ってごめんなさい!変わった形のものだったから、つい気になっちゃって」

「いいよいいよ、お前も悪気があった訳じゃないんだろ?別に構わない」

「出られなくなって中であわててたけど、何か壊れたりしてない……?途中で急に明るくなったりしたけど」

「ああ、これか?」


 天井の光っているところの脇の出っぱりを動かすと、明かりが消えた。外はもうすっかり暗くなったから、中には月と星の弱い光しか届かない。


「なにこれ?すっごーい!急に暗くなった!」


 もう一度出っぱりを動かすとまた明るくなった。あたしは一応夜目が利くが、どっちかというと明るい方が向いているので、今はこっちの方が良い。


「あたしはもう慣れたが、たしかに凄いよな。"おひさまシステム"だか何だかのおかげで、昼間の太陽の光を取っとけるらしいぜ」


 どっかで聞いた受け売りの説明をするが、サーバルの視線は出っぱりに釘付けだ。そわそわして上の空、たぶんあたしの話をあんまり聞いていない。


「……ちょっとやってみてもいい?」

「別に構わない。減るもんでもないし」

「やったー!」


 動かすと明るくなる。また動かすと暗くなる。そしてまた動かすと明るくなる。その度に「おおっ」とか「あはっ」とか声が漏れている。

 どうやらサーバルは好奇心が旺盛なフレンズらしい。あたしのナワバリに興味を持つんだから、それはそうだろうな、と思うけど。

 そういえば、匂いとかであたしの存在に気づかないもんなんだろうか?おっちょこちょいっぽいし、幼獣がフレンズ化したのかもしれないな、なんて思いながらサーバルを見る。

 出っぱりを動かす手は止まらない。明るく、暗く、明るく、暗く、明るく、暗く……。


「っておい!どんだけやるんだよ!目がチカチカするんだよ〜!」

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