1. ボスと寝ぐらのワゴンカー

 丸一日パークをほっつき歩いてたら、すっかり日も暮れちまった。元々あたしはナワバリが広くてあちこち動きまわるタチのけものらしいから、これで当然と言えば当然だ。


 そんでもって、何日か前に火山が噴火したもんだからセルリアンも地味に多い。このへんはあたしのナワバリで、ウロチョロされても困るので、見つけ次第倒して歩いていた。小さい奴とかならすぐ倒せるが、ついさっき倒した奴はデカくて石も無くて、結構疲れた。


 腹が減ったな、と思っていたら、ちょうどいいタイミングでボスの足音が聞こえてきた。ピコピコとした音だから聞き間違えようがない。足音はこちらに近づいてきて、やがてその主はあたしの前に姿を現した。


「おっ、今日は珍しいほうのボスじゃん」


 ボスってのは大抵は青い色をしているんだが、たまに違う色でよくわからない毛皮みたいなのがあるボスを見かけることもある。マントみたいなのを巻きつけたような感じの格好をしていて、今あたしの目の前でじゃぱりまんのカゴを頭に乗っけてんのがそのボスだ。


「ひとつ貰うぜ」


 じゃぱりまんを手に取ると、レアなボスはあたしの方をちらっと見て、そんでピコピコと足音を立てながら向こうへ歩いていった。


 見た目が違うからといって普通のボスと何か違うという訳ではないが、あたし達フレンズはよく「あのレアなボスを見つけた日には、いつもと違うラッキーなことが起こる」という話をしている。


「つってもなあ、今日ももう終わるしな。デカいセルリアン倒したから、ラッキーはそれでいいや」


 そのへんの岩に座って一休み。夕暮れが終わって、暗くなっていく空を見ながら食うじゃぱりまんは身にしみる。今日一日めっちゃ頑張ったー!って感じがする。腹ごしらえを済ませたらとっとと寝ぐらへ帰るとしよう。




 あたしが寝ぐらにしているのは、草原の中にポツンと存在している、である。

 

 箱の下にはまんまるいものが足のように四つついていて、箱を思い切り押したらそいつらが回って箱ごと動く。が、動かしても疲れるだけで良いことは特にないので、ほったらかしている。

 箱の中に入るにはコツがあって、壁についているくぼみに手を引っ掛けて、軽く引っ張ってやるとパカっと開く。閉める時は同じような要領で、内側から引っ張る。

 壁にはデカい覗き穴みたいなのもついているが、透明な板が貼ってあるからそこを通り抜けることはできない。

 箱の中にはイスがあって、座れるし、寝転がれる。イスは傾きを変えることができるのだが、なにかの拍子に気がついただけで、やり方はあんまり覚えていない。

 他にもいろいろと面白い仕掛けがあるが、戻し方が分からなくなりがちだからあまりいじらないようにしている。


 寝ぐらの方へ歩いていると、さっきじゃぱりまんをくれたレアなボスをまた見かけた。というかあたしの寝ぐらへ向かっているような気がする。


「なんでボスがこっちに?」


 その答えはすぐにわかった。あたしの寝ぐらの方向に光が見える。否、寝ぐらが光っている。


「おいおい、嘘だろ?」


 慌ててそっちへ向かって走る。ボスなんか無視だ、とっとと追い越して行く。そして寝ぐらの真ん前に到着、嫌な予感は的中だ。


「うぎゃああああ!!!出れないよ〜!!!お腹減った〜!!!助けて〜!!!!!」


 寝ぐらの天井の明かりに照らされながら、一匹の黄色っぽいフレンズが、覗き穴を内側からバシバシ叩いていた。


 おいボス、何がラッキーだ。いつもと違う厄介事を連れてきてくれたじゃあないか。

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