猫と師匠の車中泊
丁_スエキチ
0. 猫が二匹とセルリアン
走る。林の中をとにかく走る。
ヒトはチーターみたいに速くは走れないけれど、その代わりスタミナがあって長く走ることができる。前にかばんさんに教えてもらった。とは言え、息が上がってきた。
「あら、こんにちは。そんなに急いでどうしたの?」
「セルリアンが出たんだ!大きいのが!安全なところまで逃げて!」
木陰から顔を出した、名前も知らないフレンズに声をかける。
「君もヘトヘトじゃないの。私に掴まりな!飛んで逃げるよー!」
「ありがとう!」
彼女は翼をはためかせて飛び上がる。後ろの方を見下ろせば、そこそこのサイズのセルリアンが数匹うろついているのが見える。前にモノレールの線路を壊したやつや、ジャパリホテルを壊したやつほどではないけれど、大きい。
「あんなに大きいのがいて、私の巣とか大丈夫かな?」
「きっと大丈夫。ぼくの友達に任せて」
サーバルとカラカルの二人ならきっと大丈夫だ、と思った直後、パッカーン!という軽やかな音が連続して聞こえ、セルリアンは全部はじけ飛んでいた。
逃げるのを手伝ってくれた鳥のフレンズは「巣の様子を念のために見ておきたい」ということで、ぼくを下ろしてすぐに飛んで行った。そのあとすぐ、サーバルとカラカルがやって来た。
「キュルルちゃん、大丈夫だった?」
「うん。見かけたフレンズにも声をかけたから、みんな避難してくれたと思うけど」
「ま、もし逃げそびれた子がいたとしても、アタシ達がすぐにやっつけちゃったから食べられてるヒマなんか無かったわよ」
頼もしい。
「二人ともほんとに強いよね……。たいてい一発でセルリアン倒しちゃうし。なんでそんなに強いの?」
前から気になっていたことを聞いてみる。ジャパリホテルのときもそうだったけど、ほかのフレンズが苦戦しているセルリアンでさえ、サーバルとカラカルは当たり前のようにパカパカと倒していて、それがずっと不思議だった。
「アタシはサーバルと狩りごっことかしてるうちに、なんかこう……、動き方を覚えたわね。というかサーバル、元々強かったし」
「わたしもそんな感じだよ。狩りごっことか小さいセルリアン倒したりとかしていくうちに、その、うごきかた?を覚えたんだとおもう!……だけど」
「だけど?」
サーバルは昔のことを思い出すようにちょっと空を見上げてから、軽くうなずくようにして微笑んだ。
「わたしが狩りごっこしてた相手っていうのは、カラカルじゃなくて、"ししょー"なんだ!」
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