言葉の音は理の外側

クロロニー

プロローグ


 車椅子に乗る彼女はとてもHIPHOP的だった。そんなことを言うと彼女は決まってこう怒った。

「韻を踏むだけじゃHIPHOPじゃない。君は何もわかってないな」

 でも僕は知っていた。初めは何も言えなかった君が、韻を踏めるようになるまでに費やした努力を。「足がなくたってどこにでも行けるさ」そう僕に笑いかけた君の強さを。HIPHOPが最底辺から頂点を掴み取る物語であるなら、君にこそそれが相応しかった。

 だからどうか、そのままの君で――

 これは高く飛んだ彼女のために捧げる、わがままで痛切な祈り。

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