第31話 ベイシティ・ブルース/マイケル・ベイ『バッドボーイズ』

 写真と(まして文章と)映画は違う。そんな当たり前に最近気づいた。

 もっと言えば、映画館とDVD/Blu-rayでも見方は異なるのだと。

 カギとなるのは時間、正確に言うなら時間の流れ方だ。写真も文章も後戻り、じっくりとした見直しが利く。だが、映画館での映画はそうはいかない。

 映画館での最適解は、映画館でこそ活きる。もし自宅で鑑賞するなら、そして映画を映画として見るつもりなら、その状況に近づけてみる必要はあるだろう(巻き戻しを一切しない、席を外すならその時間だけ視聴できないetc)。


 言われてみれば、見ていなかった。そんな軽い気持ちで、マイケル・ベイ監督作品を2作見た。『バッドボーイズ』と『バッドボーイズ2バッド』。黒人警官2人組が犯罪組織と対決するアクションコメディ・シリーズだった。

 見ていて気づいたのは、疑問を持たせるようなシーンが皆無と言っていいことだ。筋立ては極めて明快。フックとなる謎を提示したかと思えば、次のシーンであっさり解決する。後戻りしなければ分からない、などと言う事が決してない。

 無論、細かく見れば、ツッコミどころは山ほどあるだろう。だがこの映画はと言うと、最初からそれを気にしていないように見える。冷めたらまずいポテトでも、熱いまま食べさせれば問題はない。圧倒的多数の人はわざわざ冷まさないのだから。


 いわゆる深みの類は当たり前に無い。代わりに、別の凄みがある。それは何か。爆発、銃撃、衝突。ほとんど常に、観客を退屈させないことだ。

 後に残らない。そうかも知れない。

 それでも、見ている間はずっと楽しい。それでもう十二分ではないだろうか。

 120分を楽しませることに全力を傾けていて、実際僕は楽しめた。どのシーンがどう、とピンポイントで言うのは難しい。これはつまり、全編が一定以上に面白かったことの裏返しでもあるのだろう。


 映画は映画として確かめるのが一番の誠実ではないかと、これは心の片隅に留めておこうと思う。

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