第22話 「7の月」から20年(完)/清水マリコ『終末の過ごし方』

 1999年。『終末の過ごし方』を気に入っていたのは僕だけではなかった。

 ノベライズを「赤本」と呼び周囲に薦めてまわった先輩。幾度となく本編ゲームをプレイしていた友人。当時の僕はせいぜい3番手だ。20年後にこの文章を記すだなんて、全く思ってもいない。

 薦められたノベライズに触れてみても、どう丁寧かまでは分からなかった。それでも、おぼろげに丁寧とは察せた。どこかしらに刺さった、と言うことなのだろう。


 2003年。MF文庫Jから本が出ると聞いた時は少し驚いた。と同時、十分納得もいった。その頃は多くの本屋で新書ノベライズ版『Kanon』を見た覚えがある。オリジナルな執筆依頼が来ても不思議はない。

 今読み返してみて、やはりそう思う。特に「思い込み」の強いキャラクターを描くとき、とても輝いて見える。



 この子は嘘をついているとトオは思った。白い顔でちょっと黒目が大きくて、男の子にしては可愛い顔だが、可愛い子の中身が迷い犬みたいに素直なはずない。だって私がそうだから。トオは自分を基準に決めていた。

 嘘つきなら、私にはすぐ分かる。嘘をついてる人間は、嘘がばれるのが弱みだから。

   『ネペンテス』新装版、p68



 2019年夏。清水マリコを読み始めて20年ほどが過ぎた。その間、僕は海外文学に手を出し映画に興味を持った。エンターテイメントの技術に刺激を受け、再びライトノベルも読みだしたのはここ数年の事だ。

 今回、清水マリコを読み返してみて本当に良かったと、そう素直に言っておく。追って『嘘』三部作と『ゼロヨンイチロク』を読み直し、『友達からお願いします。』を手に取ろう。新作が出たなら、その1冊も買うつもりだ。


 個人的な記憶まで書いたこともあり、予想以上に長い文になった。

 読んでくれた人が清水マリコを手にとってくれたなら、僕としても嬉しい。

 では、――よい月末を。


付記:

昨夏には『ウソエと旅する男』と仮題された新作の構想が記されている。発表媒体は未定ながら、カクヨムのアカウント自体は取得済み(!)とのこと。

https://roses-on-back.blog.so-net.ne.jp/2018-07-23#comments

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