第19話 「7の月」から20年(1)/清水マリコ『終末の過ごし方』

 インターネット黎明期を過ぎた辺り。「これからはどんどん情報が残る」「紙はもう古い」と思っていた。

 それから20年。流行は個人サイトから掲示板、ブログ、mixi、SNSと移り変わり、跡形は容赦なく消える。一度は紙にならなければ、長く残りづらいとも知った。iswebが消えニフティ会議室が消え、ジオシティーズもまた消えた。当時を伝えるサイトはもはや稀。記憶を語っておいて、語り過ぎるという事はないはずだ。


 背景の話からしよう。主に90年代からこちらの話だ。R18のPCゲーム、通称エロゲーが流行の最先端だった時代があった。ちょうど今のソシャゲ界隈のように。

 90年代前半の『同級生』『ドラゴンナイト4』から『同級生2』『下級生』。次いで『To Heart』、『WHITE ALBUM』、『こみっくパーティ』。『Kanon』『AIR』から始まる泣きゲーに、当時から異彩を放っていた『PHANTOM OF INFERNO』。そして『月姫』で旋風を巻き起こした新興サークルは、やがて商業化の道を選ぶ。発売予定のタイトルは『Fate/stay night』。

 一般ゲームにまで進出した大ヒットタイトルが出た一方で、深夜アニメはまだ黎明期で枠そのものが少ない。かなりのヒット作でもTVアニメ化されることは稀だった(OVAはあったが)。


 盛況だったエロゲーは、新書版でよくノベライズが出ていた。それも複数社から。参加面子も豪華だった。覚えている限り、作者では中山文十郎、馳星周(古神陸名義)、内藤みか。イラストでは緒方剛志(ぼうのうと名義)、たかみち、小池定路、森山大輔(森山犬名義)。

 ワニマガジン、KKベストセラーズ。ムービック、ケイエスエス、ハーヴェストノヴェルズ。数ある新書レーベルで最も勢いがあり、2013年11月まで続いていたのがパラダイムノベルスだ。いろいろ察して頂きたいが、僕に教えてくれた先輩はその背表紙を指して「赤本」と呼んでもいた。その「赤本」執筆者の中に、他ならぬ清水マリコがいた。 (続く)


付記:

界隈出身者で最も有名なのが虚淵玄と奈須きのこと言うことになるが、今回は置く。


付記2:

『ドラゴンナイト4』は正式な続編『ドラゴンナイトV』がソーシャルゲームで出たものの、メインシナリオが一度も追加されることなくサービス終了。わずか10ヶ月の出来事であった。エルフ他作品とのコラボ等もやってはいたのだが……。

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