第62話 夢のAI紙相撲本場所

 ごきげんいかがですか?


 わたしは六月に例の騒音女問題その他の『四大トラブル』のせいで、ぶっ倒れたり記憶を失ったりしてからですので、六月の後半からずっと、重篤な躁状態なのです。まあ、今回は他人に迷惑はかけていない(たぶんですけれど)から、いいやと開き直っています。ただ厳しいのが集中力がなくって、本も読めなきゃ、テレビもじっと観ていられないのです。なので、楽しみな番組は全部、録画をしています。比較的落ち着いているときに、刻み刻み観ればいいかなという気分なのです。で、先週NHKの『チコちゃん〜』録画をしようと思ったら別番組になっていて(お盆だからですかねえ?)なんと『夢の大相撲』というタイトです。「なんだこりゃ?」と松田優作になりましたわたしは番組内容を確認しましたところ、過去の名力士をCGで再現、AIを使って勝敗を決めるというではないですか! わたしは最近の大相撲は好きではないのでテレビ桟敷には座らず、大抵は『ツンボ桟敷』におかれておりますが、本当は大の好角家なのです。はあ、最前、放送禁止用語がありましたか? でも、別に放送しているつもりはないので、あなたの宗教には入信しません。全てがタダでさらに三食昼寝付き……今と変わらないな。それより、軍師あるいは宗教経営コンサルタントとして月給一億円で雇ってみませんか? あれ、なんで帰っちゃうのさ?


 さて、録画した番組を観ましたが、これは、久しぶりに面白いですよ。CGがかなりリアルですし、なんだかリアルな紙相撲を観ているようです。わたしは琴線を三味線のバチで切られるかのように弾かれた感覚でした。とくに、悲劇の横綱・玉の海をチョイスした紺野美沙子さん、渋すぎます。たしか紺野さんはわたしの大キライな、たまプラーザ在住のはずでしたが……


 わたしは精神の成長が遅い人間でしたので、紙相撲、別名「トントン相撲」などという幼稚なことを始めたのが高校生の時だなんてどこが一体が恥ずかしいのですか?

 きっかけはテレビで『双羽黒対小錦』という超巨漢(当時)同士の異世界な取り組みを観たせいです。勝敗は双羽黒が小錦を「さばおり」という荒技で土俵上に潰してしまうというゾッとするもので、これで膝をやってしまった小錦は『黒船来襲』から『ウクレレを弾いてハワイアンを歌う、アメリカさんの高木ブー』になってしまったのです。双羽黒こと北尾光司氏は先日亡くなりましたね。数奇な人生でした。


 わたしはこの迫力を自分なりになんとか再現出来ないかと考えました。その時、思い出したのが、わたしの幼少期にライターだった実父が、德川義幸さんという方に取材をしたのですが、德川さんというのが一時期起きた“紙相撲ブーム”を作った人で、取材を終えた実父が、わたしに簡単な紙相撲を作ってくれた記憶です。

「ああ、あれをやろう!」

 わたしは決めました。やる以上はリアルを追求しなくてはいけません。たまたま『神奈川新聞』に德川氏の新刊の書評が載っていたので、その本を購入し、土俵などを作り(いまは手が震えて出来ないのです。誰か作って!)、一門を色別にするという、いつもの『色キチ三平』アイデアを駆使して力士を作りました。そうしたら、重量感はもちろん紙切れですからないのですけど、結構、いい相撲を取るので驚きました。どんどん伸びて横綱(二十回、本場所を開いて二名出ました)まで行くもの。大関どまりや、陥落しちゃうもの。エレベーター力士など、悲喜こもごもです。力の衰えた力士は引退させて、断髪式を行い年寄を襲名して、新しい部屋を作ります。みんな現実と一緒です。これをわたしは社会人になって数年後までやっていました。やめちゃった理由は、欲張って幕下まで作ってしまって、取り組みを考えたり、場所を開くのが面倒になったからです。


 いまはやりたくても、土俵が作れないのでムリなのです。そう言いながらも、馴染みの蕎麦屋の箸入れが綺麗で「これ、行司の衣装にいいな」とポケットに入れて、持って帰っています。

 では。

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