19.黄昏の空から(4)
【予備知識】
・舞台は2082年のアフガニスタン。
・米印主体の平和維持軍『PRTO派遣軍』と、ロシアの支援を受けた反政府勢力『パシュトゥーニスタン』が戦う。
・パシュトゥーニスタンは外様の武装組織『シスコーカシア戦線』とも協力関係にある。シスコーカシア戦線自体も内部で二派に分かれており、実質的に三組織の連合であった。
・主人公ジーク・シィングはPRTO派遣軍の所属であり、全高7メートルの規格外兵器「
【これまでのあらすじ】
・シスコーカシア戦線の戦略級ビーム砲〈ケラウノス〉の投入により、勝利を目前に大被害を受けたPRTO派遣軍。
・自然停戦状態となった各戦線で撤退が始まる中、谷底の街道沿いでは各勢力の精鋭が最後の大乱戦を繰り広げていた。
・〈ヘルファイア〉を猟犬じみた執念で追うのは、シスコーカシア戦線の光学迷彩T-Mech〈ティル・ナ・ノーグ〉である。
◆ ◆ ◆ ◆
「ハドル2よりハドル1。現地政府軍は士気阻喪だ。ほとんど逃げたか、及び腰」
「いつものこったろ。……迫撃砲射撃開始、戦車は敵の逃げ道を塞いで山頂に追い込め! まとめて
主戦場の西側。〈ラインバッカー〉主力戦車を主とした機甲小隊がじりじりと進み、山頂に陣取るシスコーカシア戦線の狙撃Mech部隊に砲撃を仕掛ける。
彼らの背後では自走迫撃砲が次々砲弾を打ち上げ、曲射弾道で狙撃隊の潜む尾根を砲撃していた。装甲で覆われたMechを弾片で破壊するのは難しいが、降り注ぐ砲弾は相手の機動を大きく阻害するのだ。
PRTO派遣軍、第2機甲旅団戦闘団所属、第7諸兵科連合大隊。
アフガニスタンでは数少ない
「どうするポリーナ、PRTOの奴ら本格的だぞ」
「ビビんな。装甲と壕がある、伏せ撃ちなら何てことない。……30分は持たせる。車体下部と履帯を狙え、各機射撃開始」
「発射!」「発射!」「発射!」「発射!」
ポリーナの指示で〈ダビデ〉隊が果敢に射撃を始める。
火力と装甲は敵の方が上、まさにゴリアテだ。だがT-Mechほど圧倒的ではない。
そして20機の〈ダビデ〉は事前に振動ナイフで地面を切り崩し、浅い個人壕を掘って地の利を得ている――東で決着が着くまでは、ここで粘れるはずだ。
◇
「西に戦車隊」
「問題ない、〈ダビデ〉隊が押さえている。俺は『四つ足』に当たる」
「〈スネッグ〉部隊も西に回れ! こちらの方が3倍は速い、機動力で翻弄せよッ! ――頼むぞ、ゼリムハン! 通常兵器に『四つ足』の火力は天敵だ!」
「期待はするな。外様というのは存外、当てにならんものだからな」
皮肉をひとつ、〈アズガルド〉が包囲から外れて〈ピースキーパー〉に向かう。
ミサイル攻撃から復帰した〈スヴェジー・スネッグ〉部隊も隊列を組み直し、戦車部隊を側撃すべく走り始めた。
T-Mechの戦いとは流動的なもの。これでPRTOの〈ヘルファイア〉と対峙するのは、〈ティル・ナ・ノーグ〉と〈ジャハンナム〉の2機のみとなった。
「これで俺達二人! ――どうする、〈ティル・ナ・ノーグ〉!?」
「…………」
ターニャが思考を巡らせた。
東からは〈ヘルファイア〉。その後ろには〈ピースキーパー〉。
敵の増援で状況が変わった。長期戦はこちらの不利となる。
いったん諦めて撤退するか?
だがアリスタルフは敵T-Mechのどちらか片方を殺せと言った。自分は〈ヘルファイア〉を殺したい。組織の敵であり、ジナイーダに手傷を負わせた男。任務失敗は許されない。〈ヘルファイア〉の存在は不愉快だ。ジナイーダに迫る力の持ち主は自分一人で十分だ。
バッファエラーを起こしたような不定形の思考が走る。意図的に情緒の発達を抑制されて育った彼女は当然、感情をコントロールする術など知らぬ。
「……援護を。仕掛けます」
ターニャは最終的に葛藤そのものを放棄した。
何でもいい。ここで自分があの男を殺せば、全ての整合性が保たれるのだ。
「やれるのかッ!?」
「やります。……あの男に死を」
無人機〈ギロチナ・ストール〉に乗り、〈ティル・ナ・ノーグ〉が急上昇をかける。
円盤の外縁に並ぶ振動ブレードが回転を始め、身の毛がよだつような騒音を掻き鳴らす。再び振り撒かれたメタマテリアルの霧が機体を包み、銀の四腕機が空に溶けた。
「行け」
〈ティル・ナ・ノーグ〉が竜巻めいた空中旋回から〈ギロチナ・ストール〉を投擲。
投げ放たれた回転刃が断続的に熱核ジェットを噴射し、変則的な三次元スラローム軌道で〈ヘルファイア〉に襲い掛かる!
「馬鹿の一つ覚え!」
ジークはタイミングを合わせて跳躍し、飛来する回転刃を躱そうと試みた。
しかし――回避に移りかけた瞬間、〈ティル・ナ・ノーグ〉渾身のダイブキックが〈ヘルファイア〉の胴を強かに打った。
空中で〈ギロチナ・ストール〉と分離後、そのまま巧みな姿勢制御から急降下蹴りを仕掛けたのだ。〈ティル・ナ・ノーグ〉が宙返りを打って激突の反動を殺す。
そして衝撃に仰け反る〈ヘルファイア〉の右脚に、唸りを上げる回転刃が激突した。
「うぉぉおおおおおおっ!?」
攻撃ヘリすら紙のように引き裂く振動鋸刃が〈ヘルファイア〉の重複合装甲を抉り、中に詰まった人工筋線維を切り裂いてゆく。巨大な丸鋸でビルを切断するがごとき切削音!
「この、野郎ォォ――ッ!」
〈ヘルファイア〉が即座に大身槍を振るい、〈ギロチナ・ストール〉を切り払う。
振動ブレード同士の激突。刃渡り5メートルの穂先がチェーンで繋がれたブレードを断ち切り、同時に熱核ジェット機構の一部を破壊。刃に流れる高圧電流が内部回路の一部を破壊し、機体制御を失わせた。
「脚はっ!? ……まだ動く!」
停止した〈ギロチナ・ストール〉を蹴り捨て、ジークが敵機に正対する。
チェーンで連なった刃が右脚から抜け、傷痕から血のごとく電解液が流れ出た。機能停止は辛うじて避けたが、深手である。
「……息の、根を、止めてやる……」
そして機を見るに敏。〈ティル・ナ・ノーグ〉は俊敏なフットワークで懐に飛び込むと、左右下腕の振動クローで斬りかかった。メタマテリアルの霧がその周囲を取り巻く。
「いいぞ、〈ティル・ナ・ノーグ〉! とどめを刺せェェッ!」
さらに〈ジャハンナム〉が二機の周りを旋回。
サイドカー上に据え付けられた連装砲架が〈ヘルファイア〉を睨む。何かあれば即座に400mmHEAT弾の一斉射撃を叩き込む構えだ。
「消えろ、『三つ目』。消えろ。消えろ。消えろ。消えろ。消えろ。消えろ。消えろ」
「無理攻めか。デカい癖にちょこまかと!」
狂ったように跳ね回りながら消失と再出現を繰り返す〈ティル・ナ・ノーグ〉の姿は、傍目には連続でテレポートしているかのようだった。
一瞬でも隙を晒せば、すぐさまレールガンの処刑砲撃が飛んで来よう。〈ヘルファイア〉は細かな動きで防御するが、装甲が重く対応が遅れる。増えていく傷、傷、傷!
「シィィ――ッ……」
ターニャが噛み締めた歯の隙間から吐息を漏らす。
〈ティル・ナ・ノーグ〉の多関節の脚がしなり、鋼鉄鞭めいて鋭い風切り音を鳴らした。執拗なローキックが〈ヘルファイア〉の右脚を打ち、露出した傷痕を更に痛めつける。
〈ヘルファイア〉が傷を庇うように脚を引いた。
後退った。押している。逃がすものか。〈ティル・ナ・ノーグ〉がもう一歩踏み込む。
「……?」
ターニャはそこで違和感を覚えた。想定より間合いが近い。近すぎる。
然り、〈ヘルファイア〉に逃走の意思などない。後退ったように見えたのはその実、引き足を踏みしめて槍を引き絞った不動の姿勢である。
「これは」
誘われた。カウンターが来る。
ターニャは突進をキャンセルして跳び下がろうとしたが、遅かった。
「――ブッ殺してやる(MARCHU TALAI)!」
三眼の怪物の左腕が唸り、強烈な掌底が〈ティル・ナ・ノーグ〉をかち上げた。
同時に腕部内蔵レールガンが火を噴き、胸部装甲を破壊。四腕機が仰け反ってたたらを踏み、がら空きの胴体を晒す。
次の瞬間には、既に巨大な穂先がその胴を貫き、断ち切っていた。
まさに烈火、鬼の一本角。
射撃反動を利用して左腕を引き、更にその反動を使って右の大槍を突き出す。同時に熱核ジェットの爆発的噴射。そして槍のリニア機構による電磁加速。
一分の狂いもなく噛み合った歯車。全てが完璧に同期し、一撃必殺の突進突きを生んだ。
「……速い……!」
ターニャが呆然としたように呟き、腰から上を失った機体が仰向けに倒れる。
間髪入れず〈ヘルファイア〉は切り離されて宙を舞う〈ティル・ナ・ノーグ〉の上半身を掴み、振り向きざま後方へと投げつけた。
直後、無数の爆発。〈ジャハンナム〉が背後から放った〈カブダ・マタル〉の一斉射が、残骸に阻まれて空中で爆裂したのだ。
「残骸を盾にした!?」
目を剥くトールの眼前、爆炎を突っ切って〈ヘルファイア〉が現れる。
トールは
「しまっ……!」
立て直した〈ジャハンナム〉のカメラアイに映ったのは、熱核ジェットの爆風を背に突っ込んでくる〈ヘルファイア〉の姿。
射撃反動が再び怪物の左腕を引き下げ――その反対側からは――リニアーモーターで加速された大穂先の切っ先が――。
◇
二撃目の突きは超大型バイクのサドルを捉え、〈ジャハンナム〉の人車を切り離した。
両脚を切り離された深紅のMechが転げ落ち、おぞましい激突音とともにバイクともども横倒しになる。中身が生きていても、もはや戦闘はできまい。
「間抜けが、熱くなって引き際を間違えたな。……強敵だった」
擱座する二機のT-Mechを前に、〈ヘルファイア〉が油断なく残心した。
出撃からおよそ半日。ここまで長時間戦い通すのは初めての経験だが、〈ヘルファイア〉の動きは鈍るどころか更にキレを増していた。
ジーク自身は超人的な反射神経も先読み能力も持ち合わせていない。これは脳と直結した機体OSの、テクノロジーの力である。
瞬間的な戦術判断を司る〈ヘルファイア〉の人工知能搭載型OSは、そして機体制御の大半を預かる補助脳でもある。学習した機動データを機械の愚直さで分析・最適化し、より鋭く、素早く、洗練された機体運動を編み出して記憶するのだ。
皮肉にも強敵たるT-Mechの出現が〈ヘルファイア〉のOSを、そしてジーク自身をも急速にアップデートしていた。先程の会心の一撃はその結晶であった。
「さすが。二機相手に勝った」
「あとは半死の『
ジークの勝利を眼下に確かめ、サムエル・サンドバルが宣言した。
前部座席ではディナが慣れた手つきで操縦レバーを操作し、ミサイルと両腕部ガンランチャー、シャーシ下のガトリングによる猛攻を〈アズガルド〉に仕掛けている。
さらに熱核ジェットで浮遊する〈ピースキーパー〉の周囲には、『炎の蜂』隊の攻撃ヘリが遠隔制御端末めいて追随、共にミサイルやロケット弾を撃ち放っていた。さながら群体の大火力要塞か。
「いいかね! T-Mechを潰すには過剰なまでの飽和攻撃、効率は悪いがこれに限る!」
「了解っす、少佐! 5番・8番機は俺と援護、2番機は墜とされた奴らの救助に回れ!」
片羽となった〈アズガルド〉が激しい空中機動とともに弾幕を張る。
しかしレーザーユニットを片方欠いた状態では十全な迎撃は望めぬ。そして核動力ではない〈アズガルド〉では、燃料消費の激しい回避機動は長続きしない。詰めを誤らなければ、じきに墜とせるはずだ。
「いいか、『黒兜』を先に墜とすのだ! 防空能力を破壊してしまえば、あとは空襲で一網打尽! ――〈ピースキーパー〉よりビッグボード、
「こちらビッグボード、あと1時間はかかりそうだ。〈キュムロニンバス〉の艦載機を引き受けたせいで燃料補給が滞っている」
「それでは先に戦闘が終わる。砲撃支援は?」
「機甲部隊からの要請で、〈キュムロ〉が沈み際に撃った
「了解した。引き続き交戦する」
サムエルが操縦をディナに任せ、戦運びに思考を巡らす。
航空支援はない。ここは自分が引き続き〈アズガルド〉を相手取り、フリーになった〈ヘルファイア〉を西に突っ込ませるが最適解。サムエルはそう決め、指示を出そうとした。
――だが、そこにまた通信。
「サンシューターより〈ピースキーパー〉。よろしいか?」
「何です?」
サムエルが怪訝な顔で答えた。
サンシューター。先の『
「いや、大した報告ではない。……先程撃墜した『マント付き』の話だ」
サンシューターは続けた。
「引き続き
「破壊してください。今すぐ」
サムエルが即答。その顔からは一切の表情が抜け落ちていた。
「却下だ。司令部はアレを分析したがっている。できる限り完全な状態で回収したい」
「サンシューター。交戦した身として言いますが、アレは何でもありです」
「安心してくれ、サンドバル少佐。『マント付き』の電磁波反応は完全に停止している。あれほどの出力を出す炉をそう易々と再始動できるわけがない。大丈夫だ」
サンシューターがパニックを起こした者を宥めるような調子で言った。
「了解。通信終了。――ディー、着陸しろ! 対空射撃をやる!」
サムエルは早口で通信を切ると、前席の妹に躊躇なく命じた。
根拠はない。だがサムエルの歴戦の勘、あるいは本能的な危機察知能力が、これを放置してはならぬと告げていた。
「撃ったら問題じゃない?」
「そのために普段から下げたくもない頭を下げている。やれ」
「オーライ、命あっての物種」
灰青の大蜘蛛が手近な尾根に着地し、再び対空射撃姿勢をとった。
サムエルが操作権をオーバーライド。データリンクから地形図上に標的位置を表示させ、北の空に見える黒い点――〈シャングリラ〉の姿を捉える。
逆さまに落ちてくる〈シャングリラ〉の姿は、力尽きて沈む異形の深海生物を思わせた。その脇につくPRTOの
手足はぴくりとも動いておらず、〈ケラウノス〉――百合の花、もしくはグロテスクな頭足類じみた形状の戦略級ビームキャノンが、辛うじて胴とケーブルで繋がったまま空気抵抗でばたばたと暴れている。
このまま動かなければそれでよし、動いてもレーザー迎撃の通じぬ〈ファイア・ビー〉を皮切りに大小の重火力が殺到し、殺す。サムエルは無表情のままタッチパネルでミサイルの発射数を入力し、引き金を引いた。
焼け付いたレールガンの砲身が対T-Mech徹甲弾を放ち、赤と白のミサイルがそれを追う。火力の奔流が〈シャングリラ〉に迫る――。
――不意にその頭部装甲がスライドして、赤いモノアイが地上を睨んだ。
「……さすがに騙されないか。抜け目がないのか、単に疑り深いのか」
腰部のコックピットを核に放電が始まり、〈シャングリラ〉が再起動。
その左手が腿のホルダーからビーム・フューザー――カーブした持ち手を持つ、小型高出力の粒子ビーム発振器を早抜きし、背後の
そのまま両手足のエンジンから赤と緑のプラズマ排気を噴き、フラットスピンから即座に復帰。瞬間移動じみた急加速で対空砲火を躱す。
同時に両肩と背中から生えた9基のテンタクラー・マントが羽ばたき、食い込んでいた榴霰弾の弾子を払い落した。
「しかし、この反応の速さ。さっき撃ってきたのも『四つ足』かな、これは」
ジグザグに高速飛行する〈シャングリラ〉のコックピットで、独り座したジナイーダがぼそりと呟いた。
(反則みたいで心苦しいけど、うまく降りてこれた)
サンシューターの判断は至極常識的なものだったが、如何せん――〈シャングリラ〉を常識で測ろうとすること自体がミステイクであった。
この機体の動力はジナイーダ自身の放電能力であり、核融合炉のような「火入れ」を一切必要としない。停止も再始動もジナイーダの胸三寸だ。
彼女は敵の対空砲火が苛烈と見るや一切の電力供給をカットし、滑空で弾子の隙間に滑り込んだ。その上で常人ならば失神不可避の急角度フラットスピンに持ち込み、墜落を偽装して追撃から逃れたのだ。綱渡りであったが、やり遂げた。
〈シャングリラ〉がテンタクラー・マントをエアブレーキ代わりにターンし、同じく反転してきたミサイル群と向かい合う。
そのマントの隙間からレーザーユニット付きの触腕がぬるりと伸び、明るいグリーンの高出力レーザーを放った。だが墜とせない。先頭を飛ぶ〈ファイア・ビー〉がレーザー迎撃を引き受けている。
このままでは被弾する。だがジナイーダの表情に焦りはない。
「あれが装甲ミサイルか。……焼け石に水、闇夜の礫!」
彼女はレーザーの発振を続けながら、電力供給を機体の耐久限界ギリギリまで引き上げた。一歩間違えば機体が白熱電球めいて焼き切れるオーバークロックだが、この程度の加減は慣れたものだ。
過剰供給された電気エネルギーが機体背部の
――次の瞬間、〈シャングリラ〉を中心に電光が弾けた。
それは落雷のごとき……否、その放電規模はまさしく落雷そのものであった。
数千万ボルトの大電流はレーザーの軌跡を、導電イオン化した大気の道をなぞり、〈ファイア・ビー〉を侵食して絶縁破壊を誘発した。赤塗の装甲ミサイルが内部からはち切れ、爆ぜ、後続を巻き込んでバラバラに墜落する。
他愛なし。オレンジから黒に変わりつつある空の下、〈シャングリラ〉が電光の残滓を纏って宙を泳ぐ。
その胴体と太いケーブルで繋がったビームキャノン――〈ケラウノス〉が変形。
左右に突き出たグリップが変形して鍔を形作り、防盾を成していた幅広触手が砲身に巻きついて螺旋状に畳まれる。射撃時に胴体と砲を結びつけていた触手群は、撚り合わさって柄となった。
再び捻じれた
赤いモノアイが何かを探すように地上を見回し、そして――真っ二つにされた〈ティル・ナ・ノーグ〉と、その脇に立つ〈ヘルファイア〉に目を留めた。
「……やっと来やがったな。丁度こっちも片付いたところだ」
ジークが熔鉄じみた無機質な声で呟き、満身創痍の〈ヘルファイア〉が天を仰ぐ。
帯電して宙に浮く〈シャングリラ〉が左手のフューザーを発振、重金属粒子ビームの刃を立てて
対する〈ヘルファイア〉は大槍を中段に構えて身を沈め、獲物に飛び掛かる寸前の猛獣めいた前傾姿勢をとった。10基のガスタービンが獰猛に唸る。
一瞬の静寂の後、両者は同時に最大推力で仕掛けた。
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