2.社燕秋鴻
【これまでのあらすじ】
・国際平和維持組織「PRTO派遣軍」は現地政府と共に、アフガニスタン東部を支配する自称国家の武装組織「パシュトゥーニスタン共和国」と戦っている。
・機体の修理を待つ間、ジークらは不足した生活物資の調達に近場の街に向かった。そこで以前知り合った少女ジナイーダと再会し、成り行きから夕食の席を共にすることになる。
・ジナイーダに対して珍しく肯定的な感情を覚えるジーク。しかしジナイーダの正体は敵に協力する第三勢力「シスコーカシア戦線」の人間で、仇敵〈シャングリラ〉のパイロットであった。
◆ ◆ ◆ ◆
店内に入ってきた一団は幸いなことに暴漢や強盗の類ではなく――店員や近くの客が一瞬それらと見間違う程に荒くれじみた雰囲気であったが――PRTOの階級章を着けた兵士たちだった。
「あったあった、こんなしみったれた国にも酒と肉がある場所があるもんだな。まさに砂漠のオアシスって奴よ。……ん?」
集団の代表者らしき、金髪にサングラスをかけた――「マッチョなアメリカ軍人」のイメージそのままといった風体の男がこちらを見て怪訝な表情を浮かべた。
ジークが反射的に拳を握り込み、サイバネ義手のCNT人工筋肉がミシリと駆動音を立てる――しかし男は旧友に会ったかのように顔を明るくすると、後ろの仲間たちに何か言い付けてからこちらに歩き寄ってきた。
「奇遇っすね、サンドバル大尉……じゃねぇや。今はサンドバル少佐になったんすよね!」
「あ? ――ああ」
サムエルが一瞬きょとんとした表情を浮かべ、一瞬後にぱっと親しげな表情を作った。
「――カイル・ホワイトじゃないか。君もミャンマーから移ってきたのかね」
「……久々。元気してた?」
「へへっ、ディナさんも相変わらずお美しいや。こちらのお嬢さんも。へへ……」
カイルと呼ばれた男がサムエルに向き合ったまま、親指でジークを無遠慮に指した。
「で、この
「エジキエル・シィング中尉。昔の君よりガラの悪い奴さ。ハッハッハ!」
「……ジークと呼べって何回言ったら解るんだ。陰険のシスコン野郎」
ジークが低い声で言った。
サイバネ義眼の瞳孔がサムエルとカイルの手元周辺を素早く見回し、相手が反撃の武器にしてきそうなものがないか確認を始める。
テーブルの奥側にいたジナイーダが、何かに気付いて椅子から腰を浮かせた。反対側のカイルが危機感のない表情でヒュウ、と煽るように口笛を吹く。
「インド系でエジキエル? へ、クリスチャンの真似事かい」
「彼はネパール人だよ、カイル」
「ネパール? ああ、インドの北だか南だか――確か十年くらい前に政権が変わって
カイルが世間話のついでのように発言し、それから無表情で静止するジークの方に向き直った。
「その階級章、俺と同じ中尉だな。まだ『わからされて』ねぇみたいだから言っとくが、この人が優しいからってあんまり付け上がらねぇ方がいいぜ」
「……その辺にしときな。ここじゃ彼の方が先任」
ディナが辟易とした態度で制止したが、カイルは「まぁまぁまぁ」と逆に彼女を制し、得意げな顔でそのまま続けた。
「サンドバル少佐はな、これでもミャンマーの精鋭第二戦闘ヘリ連隊、通称『
ジークが鬼の形相で彼の胸倉を掴み上げ、右の拳を引き絞った。
既にその双眸は黒一色。サイバネ義眼が最大稼働し、疑似瞳孔がオフになっている。
ジークはいちいち攻撃前に牽制などしない。
先手で打撃を浴びせて出鼻をくじき、そのまま動かなくなるまで殴るのだ。
「――死にやがれッ!」
顔面を殴り潰してやる。死ぬならそのまま死ぬがいい。
ジークは渾身の力で腕を振り抜いた。
だが次の瞬間、拳撃は着弾寸前でぴたりと停止していた。
分厚い緩衝材を殴りつけたかのような、不可思議に力が抜ける感覚。後方に視線を遣ると、大理石像のごとく白い手が、彼の腕を両側から掴んでいた。
「人をグーで殴っちゃ駄目でしょう!」
遅れて背後、至近距離からジナイーダの声。純白の長髪が背に触れる感触。彼女はジークの攻撃衝動の爆発を見通し、後ろから抱き着く形で彼の右腕を封じ込めていた。
クロックアップされたジークの動体視力が、背後から零れ落ちてきた小さな白い円形――全眼型のカラーコンタクトを捉える。
「うわぁ!?」
カイルが短い悲鳴を上げて尻もちをついた。周囲のテーブル客の視線が集まる。
「この根暗野郎、いきなり何しやがる!?」
「馬鹿な、止められた……
ジークがカイルへの追撃も忘れて振り返り、怪訝な顔で固まった。
ジナイーダの右目は黒く染まっていた。正確にはカラーコンタクトが外れ、本来の目の色が――黒の
「ああ……これは――」
「……
「え。……ええ、はい。そうです」
静観していたディナが助け舟を出すようにぽつりと言ったので、ジナイーダは咄嗟にそれに乗った。
本当は目の色も体質も生まれつきのものだが、もしコンタクトが外れたのを見られたら実際そう言い訳しようと思っていた。失明の危険がある上に綺麗に染まるとも限らないため、重度の人体改造マニアでもなければまず実施しないが――眼球に色素を注入する
「……もういい。不愉快だ」
一気に取り散らかった状況にジークが大きな溜め息をつき、自分の代金を叩きつけるように置いて椅子にかけた野戦服の上着を羽織った。
今から改めてカイルを殴り飛ばすこともできなくはないが、出鼻を挫かれた。――彼は己の攻撃衝動が始動に失敗したガソリンエンジンめいて萎んでいくのを感じていた。
「帰る。……カイルとか言ったな! 他人の権威を笠に着て偉ぶる腰抜けの腰巾着! 次に俺に舐めた口を利いてみろ、その薄汚い顔を叩き潰してやる!」
「な、何なんだよ! 何でいきなりそこまで言われなきゃいけねぇんだよ!」
「無駄だ無駄だ、話の通じる相手ではない。……退出したまえ、ジーク・シィング。君に会食はまだ早かったようだな」
「今さら猫っ被りを!」
ゴツゴツと荒々しい足音を響かせ、ジークや殺気を振り撒きながらテーブルの間を抜けていった。
事態の収束を悟った店員や他の客が再び動き始め、徐々に店内の雰囲気が弛緩していく。間一髪でジークの暴力から逃れたカイルは怒りと困惑が入り混じった表情で出口の方を睨んでいたが、やがてサムエルに促されて自分の席に戻っていった。
「難儀な性格。……すみません、デザートにチョコアイス三つ」
「それ、三人分ですか?」
「全部私のだけど。帰るの?」
「ええ」
追加の注文を頼むディナの前で、ジナイーダも日傘を取って席を立った。既に皿の上のリブロースステーキは綺麗に食べつくされていた。
「ご馳走様でした。私もこのあたりで失礼します」
「今日はありがと。……追うのはいいけど、付き合う相手は選んだ方がいいよ」
ジナイーダがくすくすと笑って頷いた。
「承知していますけど――何だか他人の気がしないんですよ、彼を見てると」
「ならいいわ。難はあるけど悪い奴じゃないよ、一応」
「社会不適合者に入れ揚げると破滅するぞ。……夜道には気を付けたまえよ。そう何度も助けの手があるわけではない」
ディナが言うと、サムエルも社交辞令的に手を振った。
「ありがとう。ディナさんも少佐殿も、お元気で」
「Bye. イカしてるよ、そのタトゥー」
ジナイーダは丁寧に一礼すると、日傘を抱えて足早に店を出ていった。――店のドアが閉まった直後、サムエルが横でチョコアイスを頬張る妹へ視線を遣る。
「どうにも信用ならん女だったな。腹に一物ありそうだ」
「自分がそうだからって他人もそうだと思い込むのよくないよ」
「いや、俺には解る。外面通りの博愛主義者なら、あの狂犬を指して『他人の気がしない』なんて言うものか。何か目的があって取り入ろうとしてるか――あるいは、内側にとんでもない爆弾抱えてるかだ。どちらにせよロクなものじゃない」
◇
夜になりつつある街並みをジークは苛立った表情で歩いていた。
冷えた風。人通りは疎らで、それも大部分が歩哨の政府軍兵士だ。何人かがジークの並々ならぬ雰囲気を見咎めて近づいてきたが、上着に張り付けられたPRTO派遣軍中尉の階級マークを見てすごすごと離れていった。両組織の力関係を象徴するがごとき光景であった。
「……ついてきたのか?」
背後から小走りの足音を聞いたジークが振り返ると、畳んだ日傘を持ったジナイーダがそこにいた。純白の髪と肌だけが夜の中で浮き上がって見えた。店との距離からしてそれなりに急いで走ってきたはずだが、特に息切れした様子は見えない。
「この間とはあべこべですね、お兄さん」
「路地裏に入る気はない。……さっき殴らなかったせいで、あのカイルだかに侮られる羽目になった。虚仮にされて殴り返すこともできない腰抜けか、女子供が仲裁すればあっさり矛を収める男だと思われた。この俺が、このジーク・シィングが――」
「機嫌を直してくださいませんか。さっき止めたのも、その前も……お兄さんを不愉快にさせたかったわけじゃないんです。本当です」
ジナイーダが焦ったような表情で言った。ジークが脱力したように溜め息をつき、再び早足で歩き始める。
「別にあんたに八つ当たりがしたいわけじゃない。止められたくらいで殴るのをやめた腰抜けの自分にむかっ腹が立つだけだ。俺は自分の一貫性を破った。……明日帰るんだろ。早く宿に戻るんだな」
「そう仰らずに」
ジナイーダが歩みを早め、ほとんど小走りのような勢いでジークの横に並んだ。
ジークが根負けしたように周囲を見渡し、近くにベンチを見つけて足を止める。ベンチは道路脇の小さな新しい公園に面していて、道路の向かい側には夜警向けの屋台がコーヒーと花型の揚げ菓子を売っていた。
「――君は、そんなに俺に構いたいのか」
「はい」
「そこに座ってろ」
ジークはジナイーダをベンチに座らせると屋台に足を運び、アフガニ紙幣でコーヒーを二つ買って戻ってきた。
「ほら。代金はいい」
「こんなに奢られっぱなしでいいんでしょうか」
「いいんだよ」
湯気を立てる紙コップの片方をジナイーダに差し出した後、ジークは自分のコーヒーを仏頂面で啜った。大して良い豆ではなく、やたらと砂糖が多い。
「男女が二人で座って、歩哨に捕まったりしませんか」
「そのくらいじゃ何も言いやしない。塀の中は外国人の方が多いし……PRTOの軍人に下手な真似をしたら面倒なんだよ、お互いに。この国の病理だろうな」
ジークがどかりと座った。ベンチがぎぃ、と軋み音を立てた。
「左も外したらどうだ。誰もいやしない」
「そうですね」
ジナイーダが左目のコンタクトをとり、控えめに目を開いた。
赤外線と紫外線が可視光線と綯い交ぜになって視界に飛び込むが、闇を恐れるように照明だらけになっている大通りに比べて光量はずっと少ない。ジナイーダの白い肌は決して日光に弱いわけではない――多分、火に焼かれようが火傷一つ負わないだろう――が、彼女自身は暗い場所の方が好きだった。
「陰翳礼賛――暗くて静かで良い場所です。この間セラジ・ウマヤートを見に行きましたが、あそこも綺麗でした。名前は忘れましたけど大昔の王様の霊廟だそうで」
「ハビブラー・カーンとアマヌッラー・ハーンだ。……その目、本当に刺青か」
「……?」
ジナイーダが微笑したまま首を傾げる。その笑みには僅かな緊張の色が紛れていたが、ジークがそれに気付くことはなかった。
「ただの直感だ。腕や肩ならともかく、眼球なんかに刺青を入れといてそれを隠したがるってのが不自然に感じた。白目だけに色素沈着が起きるなんてことがあるのか、俺は医者じゃないから知らないが」
「……ただの若気の至りですよ。私、お兄さんが思うほどいい子ではないんです」
「自分がやりたくてやった事なら堂々としてりゃいいんだよ」
「あなただって本名を隠してたじゃありませんか」
「……」
黙り込むジークの前でジナイーダが続けた。
「エジキエルって特別変わった名前でもないと思いますけど、嫌いなんですか?」
「ヒンドゥー圏らしくはないだろう。母親がヒンドゥー教徒じゃなかったんだ――別に嫌いじゃない。名乗るたびに妙な顔をされるのが気に食わないから仇名で呼ばせてるだけだ」
「私も同じことです」
「……それで、何の用だ。俺とお喋りしたいわけでもないだろう」
「そうですよ?」
ジナイーダが呆気にとられたように答える。
「仲間が欲しいって言ったでしょう。宿に帰っても一人きりで寂しいし、あのステーキハウスのお歴々の輪にはうまく入れそうになかったので」
「俺とは気が合いそうだと?
「いい雰囲気になったら物陰から仲間が出てきて、女の色気に目が眩んだお兄さんを囃し立てるかもって思ってます? ……誰もいませんよ。誰もいないんです」
「……」
二人は無言のままでそこに座っていた。ヤマアラシが二匹寄り添っているようなぎこちない時間が数秒過ぎたが、直後に遠くの茂みでがさりと音が鳴った。ジークが反射的に身構え、ジナイーダが公園の暗闇の一角を見る。
「何かいるが」
「猫ですね。焼いて食べます?」
「馬鹿を言え。……そこか」
ジークが視線を向けると、義眼のサーマルカメラが一抱えほどの熱源を映し出した。
隣でジナイーダが笑顔で「おいで」と呼びかける――だが、猫は逃げていった。
「……あはは、動物すら見向きもしません」
「人馴れしていないだけだ、何でも自己嫌悪に結び付けるのはやめろ。――君が第一印象より構われたがりだってのはよく解った。どうも同族意識みたいなのを俺に抱いているらしいってのもな」
「はい、お互いに孤独という共通の友人がいます。――迷惑ですか?」
「いや」
ジークが黙った。
サムエルらがいた時に比べて、彼女は心なしか所在なさげに見えた。虚勢を張るタイプというのは強ち間違いではないのかもしれない――あるいは彼女からも自分が同じように見えているのだろうか。
「一期一会の縁と思って話す。今から言うことは他の誰にも言わないでくれ」
「はい」
「……君にそう思われるのは正直悪い気分じゃない。だが――俺は君にどう接するべきか決めかねてるんだ。内戦の日からずっと一人で、この世を恨んで生きてきた。それまでの価値観とか、生きる指針は全部ぶっ壊れた。ガートルード・スタインだ」
正面の暗闇を義眼越しに見つめながら、ジークが続けた。
「……
ぽつぽつと語った後、ジークは長い長い沈黙に入った。
夜闇の街の中で冷たい風だけが音を立てていた。
「やっぱり忘れろ。俺は何も言っていない」
「それはできかねます。……あなたのことを知れてよかった」
ジナイーダが微笑して立ち上がり、ジークの正面に回った。
「正直、お兄さんとここまで気が合うとは思いませんでした。今日でお別れなのが本当に残念です。
「
「ふりゆくものは我が身なりけり……なんて」
「……は、は。若い身空で」
ジークが(普段の彼からは信じがたいことに)口角を笑みの形に吊り上げた。
その感情が快の方向に振れたのを見て、ジナイーダも僅かばかりの達成感を覚える。――だが直後に別の思考が冷や水を浴びせた。
(次に会う時は間違いなく敵同士で、この人は自分に殺意を抱いている。――今これ以上入れ込むと、
彼女はどこまでもエゴイストであり、そして理解者に飢えていた。
アリスタルフは自分に甘いが、それはあくまでも彼の目的に自分が不可欠だからだ。設備に投資しているのとあまり変わりがない。そして彼は自分の力を利用するために自分を閉じ込めようとしている。ターニャは……大事な妹分だが、彼女が従っているのは自分ではなくアリスタルフだ。
彼と自分が何のわだかまりもなく付き合いを持てるとしたら、それはアリスタルフとの契約が終わり、彼の元を離れた時だろう。それまでは――少なくとも、自分が〈シャングリラ〉の乗り手であることは隠し通さなくてはならない。
「……夜も更けてきました。どうします? 伝え聞いた話によりますと、市井の方々は意気投合した相手と連絡先交換なる儀式を行うそうですが」
「仕事用のアカウントしかないな。SNSもやってないし、実家ももうない」
「私も同じ。ままなりませんね」
ジナイーダが肩を竦めて笑った。繋がりを持たずにすんだ些かの安心とともに。
「やはりはぐれ者ははぐれ者らしく、
「送るか」
「すぐそこです、お構いなく。――ご縁があればまた会うすることもあるでしょう。次からジャラーラーバードに来た時は、ちょくちょくこのベンチに座りにくることにします」
「覚えておく。俺は義理堅い方だ、ジナイーダ・ナイジョノフ」
純白の少女は寂しげに笑うと、開かれた黒と紅の目でまっすぐジークを見た。
「やはり今日あなたに会えたのは幸運でした。次に会えた日は……その日こそお友達になりましょう、ジーク・シィング。私の名前、よければ覚えておいてくださいね」
ジナイーダは丁寧に一礼すると、再び目を閉じて軽やかな足取りで歩き去っていった。
(……ああは言ったが、多分もう会うことはないだろう)
今ここに吹いている夜風めいた寂寥を感じながら、ジークは小さくなっていく彼女の背中から視線を外した。
これでいい。少なくともジナイーダが街ごと焼かれるという心配はなくなった。彼女はここにいるべき人間ではない――戦うのは自分のような人間の役目だ。
国際秩序とか人々の平和とか、組織の掲げる耳障りのいい理屈に同調する気はない。
自分が
〈ジャハンナム〉を旗頭にした機甲部隊、山岳地帯に張り巡らされた防衛網。そして『マント付き』を初めとする謎のMech群――全て、全て自分と〈ヘルファイア〉が焼き払う。残らず、全て!
◆ ◆ ◆ ◆
※「明日ありと思う心の徒桜」「夜半に嵐」
…親鸞聖人の和歌「明日ありと 思う心の仇桜 夜半に嵐の 吹かぬものかは(桜は明日もまだ美しく咲いているだろうと安心していると、夜中に嵐が吹いて散ってしまうかもしれない)」に由来。
※「ふりゆくものは我が身なりけり」
…入道前太政大臣の和歌「花さそふ 嵐の庭の 雪ならで ふりゆくものは 我が身なりけり(花をさそって散らす嵐の吹く庭は、雪のような桜吹雪が舞っているが、本当に
ジナイーダは桜と嵐つながりでこの句を引用しつつ、若いくせに年寄りぶる天丼を仕掛けた。多分この二人はやろうと思ったら詩や文学の引用だけで会話ができる。
※「社燕秋鴻」
…出会ったばかりですぐに別れること。蘇軾の詩の一節「有如社燕與秋鴻」に由来。「社燕」は燕、「鴻」は雁の事で、春に燕が飛来する頃には雁が去り、秋に雁が戻ってくる頃には燕が去っているという二種類の渡り鳥の関係をいう。
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