メカニック解説:Mb-6〈マロース〉/ TMb-2〈スヴェジー・スネッグ〉/〈ジャハンナム〉

〈マロース〉


型式番号:Mb-6

開発元:ロシア連邦軍

所属:ロシア連邦軍、パシュトゥーニスタン等

前後長:0.7m

全高:2.2m

戦闘重量:0.52t

総推力:0t(スラスターなし)

最高速度:40km/h

装甲材質:防弾鋼(重要部のみ)、繊維強化プラスチック

動力機関:水系リチウムイオンバッテリー

推進機関:なし


武装:

・30mm対Mechライフル

・RPG-55対戦車ロケットランチャー

・12.7mmガトリングガン

・その他、基本的に全ての歩兵火器を使用可能


外見:

 塗装は陣営や場所によっても異なるが、アフガニスタンでパシュトゥーニスタンが運用している機体は暗い砂色に塗られることが多い。

 装甲形状は簡素で平面的。胴体天板がそのまま乗降ハッチになっており、その上に簡素な一つ目モノアイ型カメラアイを持つ頭部が据え付けられている。搭乗者はここから機内に入って手足を通し(着ぐるみを着るのに近い)、装着したゴーグル型のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)にカメラアイの映像を投影して外部を視察する。


解説:

 2060年代前期にロシアで開発された量産型Mech。アフガニスタンで運用されるMechの中でも頭一つ古い設計の機体であるが、度重なるアップデートによりある程度の性能を維持している。

 乗り込むというよりは着込むように装着する構造で、比較的低コストで生産・分解・整備が可能である。重量も500kg程度と軽いため運用面への負担も小さい。

 また操縦方式として搭乗者の動きをほぼそのままトレースするマスター・スレイブ式を採用しているため、少しの訓練で人間一人を「銃弾を受け付けず、100kg強の荷物を持って時速40kmで走れる強化装甲兵」に仕立て上げることができる。こうした特徴から紛争地帯においても非常に高い需要がある。


 火力面では30mm級の対Mechライフルや対戦車ロケットランチャー、12.7mmガトリングなどを運用可能である。小型軽量のボディと相まって市街戦への適正が高く、高練度の〈マロース〉小隊は時として機甲部隊に匹敵する脅威となる。

 装甲は7.62mm機銃弾に抗堪する程度であり、一般的な歩兵部隊のライフルや機関銃はほぼシャットアウトできる。ただし対戦車ロケット弾はおろか小口径の機関砲にも耐えられないため、敵Mechとの正面衝突は不得手である(こうした傾向は初期に開発されたMechの多くに共通している)。

 

〇武装

・30mm対Mechライフル

 〈マロース〉の標準武装。徹甲弾と榴弾を使用可能で、バレル下に7.62mm機関銃を同軸装備する。

 人間からすれば相当の長物だが、〈マロース〉はこれを小銃のように取りまわせる。近年ではPRTOの〈ヨコヅナ〉に対する威力不足が指摘されており、新型徹甲弾の配備による威力向上が課題となっている。


・RPG-55対戦車ロケットランチャー

 マロースのFCSに対応した前装式ロケットランチャー。対人榴弾・サーモバリック弾・タンデム成形炸薬弾といった弾種の他、専用に用意された対戦車ミサイルを発射可能。誘導は〈マロース〉側のコンピューターで行う。


・12.7mmガトリングガン

 重機関銃やアンチマテリアルライフルで運用されるものと同じ12.7mm弾を使用するガトリングガン。遠距離の敵を掃射するために開発されたが、機構が複雑で駆動には機体のバッテリーを消費するため配備数は多くない。



◆  ◆  ◆  ◆  ◆



〈スヴェジー・スネッグ〉


型式番号:TMb-2

開発元:ロシア連邦軍

所属:ロシア連邦軍、パシュトゥーニスタン等

前後長:3.7m

全高:5.14m

戦闘重量:19.2t

総推力:10.7t

最高速度:300km/h

装甲材質:セラミック・防弾鋼複合装甲、繊維強化プラスチック

動力機関:通常型ジェットエンジン×1

推進機関:同上


武装:

・30mm/100mm低圧砲複合マシンガン

・腕部7.62mm機関銃

・誘導妨害装置

・スモークディスチャージャー

・〈カブダ〉超大型擲弾


外見:

 カラーリングは暗い砂色。袴を履いたような姿の二脚型。

 頭部は〈マロース〉のそれを小改修したもので、元と同じモノアイ式のカメラアイを持つ。この他、両肩に一基ずつサブカメラを装備している。

 細身な上半身に対して太く頑強な下半身を持ち、脚部走行ローラーとジェットエンジン内蔵の大型リアスカートを装備している(これは上半身を軽くして重心を下げ、走行中の安定性を確保するための工夫である)。コックピットは両脚の間に存在しており、腰部底面のハッチを開けて下から乗り込む形式をとる。


解説:

 ロシアが開発した大型Mech。TMb(重機械化装甲)という他に例を見ない分類が与えられており、歩兵より戦闘車両に近い性格を持つ。

 従来のMechに比べて5m級とかなり大型であるが、本機の開発時点のロシア連邦軍に単騎をもって戦術単位とする思想は存在しなかったため、あくまでも機甲部隊的な集中運用が念頭に置かれている。このほか、武装面でも機甲部隊との弾薬共通化が図られており、この点でも歩兵に近い位置にあった〈マロース〉とは違う運用思想が見て取れる。


 開発にあたってはPRTOの〈ヘルファイア〉の情報がある程度参考にされており、実際の性能も同機のロウワー・バージョンといった趣である。

 ただし過剰すぎる馬力を脳波制御操縦BMIで無理やり制御している〈ヘルファイア〉に対して、本機は性能を無理のない範囲に抑えることで安定した走行性能を獲得しており、訓練を受けた兵士であれば問題なく性能をフルに発揮できる。マニュアル化した訓練によって一定の質のパイロットを用意できるという点では、本機の方が兵器として完成度は高いと言える。


 総じて高機動力と量産性を両立した高級機であり、数を揃えた本機の突撃戦法を食い止めるのは先進国の軍隊であっても困難である。

 ただしパシュトゥーニスタンに卸された初期型はまだブラッシュアップされていない部分も大きく、脚部損傷による転倒の衝撃で座席の固定が破損する不具合なども確認されている。


〇武装・装備


・30mm/100mm低圧砲複合マシンガン

 30mm長砲身機関砲の下に100mm低圧砲を据え付けた複合兵装。大口径の榴弾威力と機関砲の制圧力を両立しており、優れた総合性能を誇る。低圧砲からはミサイルも発射可能だが、今のところパシュトゥーニスタンには配備されていない。


・腕部7.62mm機関銃

 左腕に内蔵する対人機関銃。機銃としては至極オーソドックスな性能である。


・誘導妨害装置

 電磁パルスを放射して敵機からのロックオンを防ぐ装置。両肩に外付け式で搭載する。最新型のミサイルには通じないことも多いが、赤外線とレーダーの両方に対応可能である。


・スモークディスチャージャー

 背部に搭載。赤外線を遮断する煙幕弾を投射する装置。ロシア製軍用車両に一般的に装備される型で、高速で動き回る本機にとっては使用機会は少ない。


・〈カブダ〉超大型擲弾

 対〈ヘルファイア〉を想定した超大型無反動砲。腰に二発懸架する。

 ドイツのパンツァーファウストに近い外見を持つ簡易的な兵器だが、先端の成形炸薬弾頭には100kg近い炸薬が封入されており、当たれば一撃で〈ヘルファイア〉の腕を貫通するほどの威力を持つ。ただし命中精度と射程性能は悪い。



◆  ◆  ◆  ◆  ◆



〈ジャハンナム〉


型式番号:TMb-2P

開発元:自称国家『パシュトゥーニスタン共和国』

所属:パシュトゥーニスタン

前後長:1.9m(騎乗時 14.25m)

全高:5.14m(騎乗時 5.7m)

戦闘重量:92.2t

総推力:210.7t

最高速度:騎乗時920km/h

装甲材質:セラミック・防弾鋼複合装甲、均質圧延装甲(人型部)

     均質圧延装甲(車体部)

動力機関:小型ガスタービン発電装置(人型部)

     通常型ジェットエンジン×6(車体部)

推進機関:通常型ジェットエンジン×6(車体部のみ)


武装:

・〈シムーン〉装甲自律バイク

・30mm/100mm低圧砲複合マシンガン(短砲身)

・ウォーハンマー

・〈カブダ〉超大型擲弾


外見:

 カラーリングは艶やかな深紅。巨大なフルカウルの二輪車に跨った5m級Mech。

 〈スヴェジー・スネッグ〉の脚部ローラーとリアスカートを撤去し、全身に流線型の増加装甲を取り付けている。頭部も装甲が被せられて大型化しているため、よりシンプルな人型に近い体型となっている。

 

解説:

 〈スヴェジー・スネッグ〉をベースにパシュトゥーニスタンが改修を加え、PRTOのT-Mechと渡り合えるだけの性能を持たせた機体。同組織における〈スネッグ〉部隊のフラッグシップとしての運用を想定している。

 人型部分を〈ジャハンナム〉、バイク部分を〈シムーン〉とするのが正式な呼び名だが、まとめて〈ジャハンナム〉と呼称されることも少なくない。


 機体そのものの筋骨構造は改修元の〈スネッグ〉とほとんど変わっていないが、脚部ローラーが機体をバイクに固定するための電磁石ユニットに置き換えられている他、腕部機銃や大型リアスカートも撤去されている(これに伴ってジェットエンジンもなくなっているため、代わりに補助発電機を搭載している)。


 元機同様に突撃戦法を最大の持ち味としているが、〈スネッグ〉が素早い移動からの射撃戦を想定しているのに対して、本機は文字通り敵陣に突っ込んで車輪で踏み荒らす戦い方を基本とする(皮肉なことだが、この極端な近接戦志向は敵である〈ヘルファイア〉の影響を強く受けている)。


 急場しのぎの改造品であるため総合的な完成度では他に一歩劣るが、大質量・重装甲の突進が生み出す破壊力は通常兵力にとっては紛れもない脅威であり、対T-Mech戦でも機体相性によっては十分渡り合えるポテンシャルを発揮できる。


〇武装・装備

・〈シムーン〉装甲自律バイク

 本機最大の特徴にして存在意義。これを失えば〈ジャハンナム〉は劣化版〈スヴェジー・スネッグ〉に成り下がる。

 スパイク付きの装甲バンパーを持つシャーシにジェットエンジン6基と自律航法システムを組み込んだ轢殺兵器で、ハンドルから手を放してもある程度の自動走行が可能である。またフロントボックスに手持ち武器を格納できる。

 アフターバーナー機能も使用可能だが高推力なぶん燃料消費が激しいため、長距離巡航の際は増槽を二つ車体後部に搭載して航続距離を延ばしている。

 

・30mm/100mm低圧砲複合マシンガン(短砲身)

 〈スヴェジー・スネッグ〉の複合マシンガンの砲身を切り詰め、片手で保持できるようにしたもの。機関砲の初速が落ちたぶん貫通力はやや下がっている。非使用時は背部にマウントして保持する。


・ウォーハンマー

 〈カブダ〉とほぼ同じスケールの打撃武器。何の機構もない鉄塊であるが、加速をつけて叩きつければ大抵のMechには致命打を負わせられる。


・〈カブダ〉超大型擲弾

 〈スヴェジー・スネッグ〉が装備するものと同じ大型無反動砲。バイクのフロントボックスに格納スペースがあるため、〈スネッグ〉より多くの弾数を携行できる。


・誘導妨害装置

 両肩に装備。〈スヴェジー・スネッグ〉と同型の武装である。

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