メカニック解説:CC-TM-004〈ヴァルハラ〉/ CC-TM-002〈アズガルド〉

〈ヴァルハラ〉


型式番号:CC-TM-004

開発元:EBU(欧州・ブリテン共同体)

所属:シスコーカシア戦線

前後長:7.5m(四足歩行時)

全高:4.0m(四足歩行時)

戦闘重量:20.4t

総推力:77.2t

最高速度:970km/h(飛行時)

装甲材質:CNT(カーボンナノチューブ)強化アルミニウム複合装甲

動力機関:通常型高推力ジェットエンジン×2

推進機関:同上


武装:

・頭部ビーム・ラム

・ビーム・フューザー×2


外見:

 カラーリングはぎらついた黒紫。四つん這いのワイバーンめいた、肉食獣と翼竜を足して二で割ったような体型であり、二足歩行と四足歩行の切り替えが可能。

 前腕に展開式の主翼を持つ。頭部には多数のフューザーを内蔵する巨大な十字楔型の『兜』を被っており、その裏にフェイスカバーで覆われたモノアイと放熱板が存在する。背中にはベーン状の推力偏向パドルを持つジェットエンジンを搭載している。その他、腰部後ろには武装をマウントできるハードポイントが存在しており、据え付けた武装は触手型マニュピレーターになった『尾』で操作できる。


解説:

 シスコーカシア戦線のアリスタルフ派閥が所有する強襲型T-Mech。現在はゼリムハンの派閥に貸与している。

 ビーム・ラム、超大容量蓄電装置アビサル・キャパシタ、空気抵抗の低減と自身のビーム粒子からの防護を担うプラズマ・アクチュエータ、不整地を想定した四脚走行システム。〈ヴァルハラ〉はこれらヨーロッパ諸国の持つ先進技術を統合した試作兵器の一つである。

 非侵襲式ブレイン・マシン・インターフェイスを操縦システムに組み込んでおり、これにより手術なしで思考によるある程度の操縦補助が可能となっている(ただし読み取り精度は侵襲式に及ばない)。


 限定的ながら飛行が可能な機動力とビーム・ラムの圧倒的破壊力を併せ持つ本機は市街戦、とりわけコンクリート製建造物の破壊を念頭に置いて設計されている。

 軍事的目的に建造された要塞に限らず(例えば通常のビル・マンション等であっても)鉄筋コンクリートの構造物を間接照準砲撃で完全に破壊するのは困難であるが、ビーム・ラムによる突撃を破城鎚よろしく打ち込めば直接基礎を破壊し、完全に倒壊させることができる。

 それ以外にも敵対地域のダムを破壊して河川氾濫を起こしたり、バリケードの類を伐開して味方の進軍路を作ったりといった任務が想定されており、総じて対兵器より建造物破壊に比重が置かれている(事実、本機のビーム・ラムは対装甲兵器として見ても威力過剰である)。これは開発元であるEBUが、T-MechをPRTOが想定したような「単騎での戦線突破と後方攪乱任務」のみならず、より多彩な状況へと投入することを考えているためである。


〇武装・装備

・頭部ビーム・ラム

 〈ヴァルハラ〉の目玉にして存在意義と言える武装。複数基のビーム・フューザーからビーム刃を一斉発振し、衝角の形へと収束させることで分厚いコンクリートすら破壊する粒子奔流を作り出す。また砲口を展開して一斉照射することでビームを散弾状に放つことも可能である。

 このビームの衝角はごく最小限の装甲しか持たない本機を防護する盾ともなり、本武装を展開して突撃する〈ヴァルハラ〉を正面から撃破するのは至難の業である。ただ消費電力の膨大さから長時間の持続発振は不可能であり、定期的に停止させて発電時間を稼ぐ必要がある。また電力以外にも『弾』となる重金属粒子が必要となるため、本機の戦闘継続時間はT-Mechにしては短い。

 

・ビーム・フューザー×2

 前腕掌部に内蔵されたビーム兵器。ビーム・ラムに組み込まれているのと同型であり、射撃とビーム刃の発振の両方が可能である。

 サイズに比べて高火力であり、自衛火器としては十分な性能だが、ビーム・ラムの強力さもあり使用頻度は少ない。



◆  ◆  ◆  ◆  ◆



〈アズガルド〉


型式番号:CC-TM-002

開発元:EBU(欧州・ブリテン共同体)

所属:シスコーカシア戦線

前後長:4.5m

全高:10.7m

戦闘重量:65.5t

総推力:158.0t

最高速度:700km/h(飛行時)

装甲材質:EBU式チタン・セラミック系複合装甲

動力機関:通常型高推力ジェットエンジン×4

推進機関:同上


武装:

・30mmスマートガトリングガン

・近距離防空ミサイルランチャー

・フェイズドアレイ・レーザー迎撃ユニット


外見:

 カラーリングは油を塗った鋳鉄めいた漆黒。腰部前後に大型のスカートアーマーを持つ。〈ヘルファイア〉に近いプロポーションの二脚機であるが、平面装甲の組み合わせが多い〈ヘルファイア〉に対してこちらは流線形の曲面装甲で覆われている(この装甲は中空であり、増加燃料タンクを兼ねている)。

 背中には『背びれ』状のブレードアンテナと、アームで懸架された左右二基のレーザーユニットがある(これを折りたたんだ姿はさながら人型の甲虫である)。スラスターは前後のスカートアーマーに組み込まれており、それに加えてショルダーアーマーの中にも戦闘機動用の補助ジェットエンジンを搭載している。


解説:

 シスコーカシア戦線のアリスタルフ派閥が所有する強襲型T-Mech。現在はゼリムハンの派閥に貸与している。〈ヴァルハラ〉同様に非侵襲式ブレイン・マシン・インターフェイスを操縦システムに組み込んでいる。

 〈ピースキーパー〉同様に飛行が可能な空陸両用機であり、設計にあたっては指揮通信・部隊防空能力を強く意識されている(そのため地上目標に対しては見た目ほどの火力はない)。


 これは本機が反政府勢力の指揮官機として、航空機を多数運用する先進国軍と戦闘することを想定しているためであり、ヨーロッパ諸国の「自分たちの軍隊は使わず、対立国内の反政府勢力に戦力を渡して力を削ぐ」という志向が見て取れる。


〇武装・装備

・30mmスマートガトリングガン

 右腕に保持する6砲身ガトリング砲。〈ピースキーパー〉の対戦車缶切りタンクオープナーと同クラスの機関砲だがより先進的な火器管制システムを内蔵しており、時限信管付きの対空榴霰ABM弾にも対応している。これは空中で爆裂して無数の重金属弾子を放出するもので、空中での起爆位置を高精度でコントロールすることで任意の場所に濃密な破片弾幕を張ることができる。

 もちろん通常の徹甲弾を用いることも可能だが、装甲貫通力自体はさほど同クラスの機関砲の域を上回るものではないため、〈ヘルファイア〉のような重装甲目標の相手は不得手である。


・近距離防空ミサイルランチャー

 左腕に保持するランチャー。地対空ミサイルを16発格納したコンテナの横にハンドガン型の照準装置を据え付けており、Mechの手に持って運用することができる。弾頭自体はロシア軍やパシュトゥーニスタンで用いられるもので、特に特筆すべき点はない。


・フェイズドアレイ・レーザー迎撃ユニット

 背部にアームで保持された光学兵装。〈シャングリラ〉と同型の武装だが、こちらは機体に合わせて出力がややスケールダウンされている。

 一見すると簡素な板状の表面を持つが、これは超小型の発振器の集合体であり、ここから位相を揃えたレーザーを放射して合わせることで高出力の光線を形成する。

 レーザー迎撃装置自体は各陣営においてそれなりに普及しているが、本兵装は大容量コンデンサ「アビサル・キャパシタ」の恩恵により弾体それ自体を焼き切って破壊するほどの高出力を持つ。このためミサイルやロケット弾の迎撃の他、対人・軽装甲目標への直接攻撃にも使うことができる。

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