メカニック解説:XTM-1〈ヘルファイア〉

〈ヘルファイア〉


型式番号:XTM-1

開発元:PRTO(環太平洋条約機構)

所属:PRTOアフガニスタン方面派遣軍

前後長:5.2m

全高:7.2m

戦闘重量:137.0t

総推力:377t

最高速度:950km/h

装甲材質:ナノ多結晶スティショバイト複合装甲+防弾鋼外殻

動力機関:ヘリカル・コイル式マイクロ核融合炉

推進機関:無放射能式高推力熱核ジェット×10


武装:

・腕部30mmチェーンガン×2


追加装備:

・テルミット・バトルアクス

・〈ハリケーンアロー〉対戦車ミサイル2連装ランチャー×2


外見:

 カラーリングはブラッドレッドと黒。首無しで長い手足を持つマッシブな重装甲機。背中に4基、大型の腰部リアスカートに6基のジェットスラスターを持つ。装甲車の車体を思わせる、大きく突き出した楔形の前面装甲には禍々しい三つ目のペイントがされている。


解説:

 PRTOの開発した世界初のT-Mech、というより「T-Mechを作るための性能試験用試作機」。〈ヘルファイア〉は現在のスタイルになってからつけられた愛称であり、正式な呼称はXTM-1の型番のみとなる。

 テスト走行中にパイロットが四肢と両目を失う大事故を引き起こして死蔵されていた、装甲と内部機器のみ装備した機体を持ち出し、最低限の武装を現地改修で搭載したのが現在の姿である。


 大推力かつ推進材が不要な熱核ジェットスラスターを10基装備しており、圧倒的な加速力と無尽蔵の航続距離を持つ。

 また頑強なフレームに死角なく最新式の複合装甲モジュールを配し、その上から更に戦車用のショト装甲と同系統の防弾鋼カバーを被せているため、通常兵器では有効打を与える事すら困難なほどの防御力を誇る。 

 またCNT人工筋肉に加えて関節部にモーターを併載する構造により、重装甲を纏ってもなお俊敏に動けるほど駆動出力と積載量に余裕を残しており、必要であれば更に装備を増設することも可能である。


 ただし火器管制装置は専用の開発品ではなく、武装同様3m級Mechである〈ヨコヅナ〉から移殖した物である。これ自体は「3m級Mechが搭載する装備としては」それなりに高性能であるものの、〈ヘルファイア〉の機体速度に追随できる性能は想定されておらず、結果として射撃武器の使用に大きな制約がある。このため本機の武装は〈ヨコヅナ〉のチェーンガンとミサイルランチャーを左右2基ずつ移殖するのみというシンプルな構成になっている。


 総括すると、本機は攻防速のうち「防」と「速」に極端に振った機体であり、貧弱過ぎる射撃火力もあって本来はそれほどの活躍ができる機体ではない。

 ただしAIによる操縦補助と後付けされたBMI操縦装置の組み合わせによる高い追従性と反応速度、そして何より圧倒的なスピードと装甲防御力が生み出す生存性と突破力は本物であり、ある意味で「敵陣への単騎突撃からの後方攪乱」というT-Mechのコンセプトをストレートに表現した機体と言える。


〇武装・装備

・腕部30mmチェーンガン

 両腕の前腕部装甲カバーに内蔵される機関砲。〈ヨコヅナ〉の武装を転用したもので、30×113mmを使用する。主に焼夷榴弾を使用し、装甲貫徹力はこのクラスの機関砲では中の下程度。トラックや歩兵と言ったソフトスキンを想定している。


・〈ハリケーンアロー〉対戦車ミサイルランチャー

 〈ヨコヅナ〉が背部に装備する箱型2連装ランチャーを肩部に増設したハードポイントに外付けしたもの。これといって明確な特徴があるわけではないが確かな実績と性能を持ち、トップアタック(薄い天板を狙う飛行軌道での射撃)なら確実に主力戦車を撃破できる。


・テルミット・バトルアクス

 キャンプ・ビッグボードで製造された武装。関節部モーターと破損した装甲ブロックから削り出した超硬セラミック・ブレード、工作機械の溶接用テルミットバーナーなどを組み合わせた機材で、予備パーツの調達が容易という特徴がある。

 「バーナーで加熱しながら回転するチェーンブレードで削り切る」という武装であるため瞬間的な破壊力は高くないが、〈ヘルファイア〉の怪力に抑えつけられた標的がこの溶断攻撃から逃れることは困難であり、残骸に残った破壊痕の凄惨さからパシュトゥーニスタン兵には非常に恐れられている。


・格闘攻撃(体当たり)

 厳密には武装ではないが、本機にとってもっとも強力な攻撃方法。加速して137トンの機体をぶつけるだけで大抵の標的は粉砕できる。ただし自機のパーツや装甲まで損傷する恐れがあるため、ジークはよほどの重量差がある相手か、逆に無傷での勝利が望めない強敵にのみ用いている。

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