たかぴお
「ダイアモンド、これがせーらーふくとやらか」
「そう。巷ではよく機関銃とあわせてコーデするらしい」
「いやそれは特定の状況下すぎるわ」
「前々から思ってたけど、セーラー服と機関銃ってそれただの水兵だよな」
「ユーゴ、俺お前だけはどんなトンチキなことあっても
「いやそんな大ボケでもないだろこれ」
ある朝のARMA居住棟。その一角では、一種異様なような、そうでもないような、不思議な光景が広がっていた。
事の発端は、セーラー服であった。ダイアモンドのバディである君島捜査官が、外出許可をとれるかどうか交渉しに行っている間、セーラー服にはしゃぐ二体がおかしなことをし始めないか見ていてくれと頼まれた十文字麟太郎。傍らの明らかに通りすがりのユーゴは、友人が面白そうなことをしているので首を突っ込みにきた様子を隠さない。
普段はあざやかなピンクの髪を、艶々と豊かな黒髪に変え、生地も真新しいセーラー服に着替えたダイアモンド。向かいには、制服のプリーツスカートというには長すぎる、ウェディングドレスのようなロングトレーンで鋼鉄の下半身を半ば覆った(これでも半ば、なのである)百鬼夜行が、彼女に介助されて、胸元の赤いスカーフを結んでもらっていた。
「うう。くすぐったい」
「ひゃっきー、我慢。君島が戻ってきたらいよいよタピオカだから」
「たかぴお」
「うん。たかぴお」
言いながらスカーフを結び終わったらしく、これでよし、とダイアモンドは満足そうに頷く。百鬼夜行は、ダイアモンドと揃いの制服を着た肩をゆらした。黒地に赤いラインの映える古式ゆかしいセーラー服。刃を取り外した腕はたよりなく、空っぽの袖口がゆらゆらなびく。その部分を、ダイアモンドがしっかりと握る。
「いざたかぴお」
「いざたかぴお」
「れっつごー」
「おー」
「なんやそのいざ鎌倉みたいなノリ」
「かまくら」
「タピオカ」
「たかぴお」
「かまくらも可愛いね、ひゃっきー」
「そうだな、ダイアモンド」
「はー女子高生のテンションわからん………怖…………」
身を抱いて震える麟太郎に、女子高生でもないけどな、というツッコミは飲み込んで、ユーゴは無言でパンフレットを差し出した。訝しげに受け取った麟太郎はそれに目を通す。近場のタピオカ専門店をリストアップした、水彩画風の小洒落たパンフレットだった。
「彼女のバディ、君島捜査官だっけ。渡しといて」
「はーお前ようこんなもん持ってたな。さてはJKか」
「いや一時期、ワンチャンタピオカ芋から自作できねえかなって思って、いろんなお店調べたことがあったんだよな。そのときもらった」
「めちゃめちゃ素朴な疑問なんやけど、なんで芋から自作しようと思ったん? 農家か?」
「春先になるとどうもなぁ」
「流し方雑か?」
コントを始める二人をよそに、セーラー服のARMAたちは、片方はぴかぴかの革靴、片方は鋼鉄の脚でステップを踏み始めた。このふたりがタピオカ専門店の列に並ぶ際、百鬼夜行の脚が入り口につっかえて大変なことになるのは、また別の話である。
(逆滝さんより、十文字捜査官とダイアモンドさんをお借りしました)
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