第6話
往診が済んで医師が帰ったあと、医師の「注射をしたから、気分がよくなるよ」と言う声に安心したのか、母はしばらく目を細めて私の顔を凝っと眺めていた。
きょうは普段より顔色がいいようだ。咽喉が渇いたと言うので、枕元の吸飲みを含ませると、母は目を瞑ったままおいしそうに飲んだ。
「そ、と、は?」
障子のほうに顔を向けながら訊く。天気を気にしているのだ。
「きょうも雪模様よ。見たいの?」
と、母の顔を覗く。母は、ゆっくりと頷いた。
障子を半分ほど開ける。行き場を失っていた冷気が、畳を這うように座敷に進入する。母を気遣って振り返る。母は寝床から見える眩しい景色に目を細めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます