第4話

 タオルケットは冷気を蒲団に進入させないためのもので、寒くなってからはずっと部屋の隅に置いてある。


 母の足にそっと触れる。一段と細くなったように感じた。そして皮膚の表面からは紙のような感触が伝わってくる。私は泪が出そうになった。


 目を瞑ったまま母は気持よさそうにしている。私は母のそんな顔を見るとき、いつもほっとする。こんな些細なことで喜んでくれる母の顔に安堵するのだ。


 母は、軽い寝息を立ててふたたび眠りに就いた。一日のうち話す言葉は限られている。食事のときと排泄のときくらいで、それ以外は、余程気分のすぐれたときに外の天気を訊くくらいで済んでいる。


 私には息子と娘のふたりの子供がいる。息子はともかく、娘は私が母と同じようになったとしたら、嫌な顔をせずに面倒を看てくれるのだろうか。それともそんなことを期待するほうが虫がよすぎるのだろうか。

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