第3話

 私はそっと立ち上がって少しだけ障子を開けて窓の外を見る。まるで白鳥の羽根のように白い雪が踊るように降っている。気がつけばアルミサッシュのわずかな段差に、鍵形となって雪が積もっていた。


 微かな気配に振り向くと、蒲団から腕を出そうとする母の姿が目に入った。急いで障子を閉めると、足音を立てないまま枕元に膝を突いた。


「起きたの?」

 私は微笑みながらゆっくりとした調子で母に訊く。

「あ、し」

 掠れ途切れた言葉だが、いつものことだから私にはそれが何を意味するのかわかっている。母は足を擦って欲しがっているのだ。


 傍にあったピンク色のタオルケットを足元にかけ、そっと右手を蒲団に潜り込ませる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る