第2話
一年ほど前、腰が痛いといった母が病院で検査を受けたところ、意外な診断結果を聞かされた。一瞬聞き違いかと思った。
病名は膵臓ガンだった。
さらに精密検査を受けたところ、全身に転移していることが判明した。直ちに入院した母だったが、ある日突然のように、「家に帰りたい」と悲しげな顔で私に訴えた。
私自分が楽をしたくてではなく、母のことを思って様々な言葉で諭したが、すべてが無駄であった。
母にしてみたら、自分自身のことだけに誰よりもいちばんわかっていたのだろう。そして、最後のわがままだと自分に言い聞かせた上で、私たちに訴えたに違いない。
余命四ヶ月と宣告した医師は、躊躇なく自宅に戻ることを許した。しかし秘められた母の生命力が強かったこともあって、寝たきりではあったが、いまこうして住み慣れた自分の部屋の空気を感じている。
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