第4話
机の影に小さな子供が正座しているのが見えて、ヒッと息を飲んだ。
怖々ともう一度そこを覗いたけど、机の影には束になったケーブルが横たわっているだけで子供はいなかった。
私は小さな頃から、見間違いがとても多い。
猫かと思って近づいたら白いビニール袋だったとか、頭を垂れたスーツのおじさんに見えて幽霊だと思っていたものがただの傘だったとか、そんな見間違い。
大人になっても見間違いは変わらず起こり続けたので、私は錯覚しやすいタチなんだろうと思う。
だから少しでも見間違いが減るように、部屋を片付けた。
でも片付けはこれといって得意なわけじゃなかったから、極力ものを少なくした。
ゴミはすぐ出して服はすぐ畳むとか、そんなとこ。
お風呂は好き。だけどお風呂で目を瞑るのは怖い。
目を瞑ってる間にお化けが来て目の前でスタンバイしてたら怖いじゃない?
ガチガチに心霊とか霊感とかを信じているわけじゃないけど、見てない間に何者かがにじり寄ってきていたらと思うと怖いので、シャンプーは目を開けたままする。
夜勤は日によってものすごく暇だった。
独身を理由に入れられたシフトだったけど、一週間もすれば慣れてきた。
昼夜逆転しちゃうけど、値引きシールの貼られた安いつまみ片手にチューハイ飲んでネサフできるんだから、まあ楽にお金が貰えるんだしいいか~~~って感じ。
ほろ酔いで帰宅すると、キッチンに置いていた除湿剤が倒れて中身のつぶつぶが畳に転がってなんかよくわからない白濁液が染み出していた。
「うわあ…」って床に敷いてたチラシを引っ張ってきて、除湿剤の入れ物を立てる。
中に除湿ビーズがたくさん入っててそれなりに重いから倒れなさそうでいいなって買ったものだったんだけど、なんで倒れたんだろう。
出がけに遅刻しそうだ~~~ってカバン引っ掴んで玄関までダッシュしたから、その時かな?って考えてたら、
ゴッ
音がして、え?なに?って振り向いたら、
居間の押入れに入れてた除湿剤が倒れて転がり出してきた。
畳に除湿ビーズがザラザラ出てきて畳にシミを作っていく。
私は何が起こったのかわからなくて、唖然と押入れを見てた。
いや、だって、押入れの中に風とか当たらないし、毛布カビてからは上段は衣装ケースしか入ってなくて布団はベッドの上に置きっぱなしなんだもの。
それに除湿剤を置いていたのは平らな衣装ケースの上だ。
置いた場所が悪かったのか、バランスを崩したのかとカーテンを引いて押入れの中を見てみたけどこれといって崩れたものは見当たらない。
その時、視界の端に黒い何かが見えて、
え?って振り向いたけど、やはり何もない。
生乾きの洗濯物がサーキュレーターの風に揺れているだけだ。
きっとこの影を見間違えたんだろう。
きっとそう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます