第3話
家まで待ちきれなくて途中の公園でチューハイを開けた私は、曇って星の見えない空の下にいた。
ブランコになんとなく座っていると、公園にいついているさくら猫が餌をにゃあにゃあねだってきたが、何にも持ってないよ残念でしたと撫でるだけ撫でてお別れ。
餌を貰えないとわかったらしい猫は、茂みから飛び出した別の黒猫と連れ立ってどこかへ行ってしまった。追い払っておきながらちょっとさみしい。
身勝手なものだ。
なんだか懐かしさに襲われて勢いでブランコに座ってみたところまでは良かったのだが、骨盤にごつい鎖がゴリゴリくる。
大人になってしまった。
油の点されてないブランコは重みに耐え兼ねて、ぎいぎい鳴った。
季節は梅雨、しとしと雨とざあざあ雨の間に曇り空が挟まったような、湿気の多い毎日を過ごしている。
今日も雨は降っていないが晴れることもなく、雲と雲の隙間からお天道様が見えるような見えないような中途半端な空模様だ。
夜になっても雲模様はそう変わらず、お月様も見えやしない。
ぽつぽつ立っている街灯の明かりも曇り空に鈍く点っていて、心許ない様子だ。
夜風もしっとりとじめじめの間から吹いているかのよう。
そんなことをだらだら考えながら家に着いた私だったが、
玄関を開けてすぐ思ったのは、じめじめ対策にエアコン(ドライで)つけっぱなしで出たのに「じめじめしてる…!」ということだ。
ゴミ出しはしてるけどゴミの日までに生暖かいこの季節、コバエがわくので生ゴミの袋はきつく縛ってる。
G対策に置き型殺虫剤も設置してある。
だけど湿気は自分ではどうにもできなかった。
川が近いからか湿気が山の如しで早朝の結露で窓はびしょびしょに。
それだけじゃなく窓についた結露がカーテンをカビらせる。
部屋の壁紙は、お風呂の扉開けっ放しで入ったの???ってくらいシワシワになるしで誰かなんとかしてくれ。
(生活の知恵~~~~!!!)って心で叫びながら、帰って早々パソコンの電源をつけてネットの集合知Tuyoitterを開く。
[部屋に新聞紙を敷くと湿気がマシになるかも…?]とリプライをもらって、「うちは新聞とってないけどここぞとばかりにポストにねじ込まれたチラシなら…」と思い当たって玄関から持って来て床に敷いた。
これで少しマシになればいいんだけど。
このところの連日の雨と、もともとの立地由来の結露からくるダブルの湿気に、私の家はいたるところでジメジメが発生していた。
白いはずの壁には黒いシミが浮かんでいる。
窓枠はカビているし、畳にはいつの食べこぼしなのかシミがあるし(これは関係ないか)、レースのカーテンの裾に黒い点々がついている。
圧倒的カビだ。
カビている。
チューハイを飲む手を休め、急に思い立ち換気扇を回しながらゴム手マスクを装備してシミたちめがけて漂白剤をかけていく。
カビの被害で思い出したんだけど、この前洗濯して乾燥機にぶち込んだはずの毛布が連日の湿気のせいか残念なことに押入れの中でそっとカビていたので捨てる羽目になった。
とても悲しい。
カビた毛布、とてもカビ臭く、漂白剤でも倒せなかった。
次はこうならないようにと押し入れにも除湿剤を立てる。
ベランダから見えるおとなりさんの庭にもきのこが生える季節だなあ、と残りのチューハイをグビグビ飲んで寝た。
お風呂入るの忘れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます