第2話

 私は、とある配送会社支店のコールセンターに勤務している。



 時代にそぐわないと近年改装された店舗だったが、その実、きれいなのは外壁だけで、扉一枚くぐれば使用感たっぷりでくたびれた備品が不揃いに積まれている。


 お世辞にも立派とは言い難い、窮屈なところだ。


 お客様からはかろうじて見えない場所ではあるものの、中へ入ればこれだ。


 棚からはみ出して廊下に積まれた書類の束は、裸でほこりをかぶっていていつからあるのかわからない。

 机から持ち出された文房具も、長いこと棚に置きっぱなしになっている。



 二つずつ二組突き合わされて並べられた四つの事務机の上に旧式のパソコンと電話が置かれている。

 正直な話、コールセンターの名前に完全に負けている。

 なんてことないとても簡素な場所だ。

 そして私はここで一日の多くを過ごすのだ。



 先日から、上司より「独身だから何かと都合付きやすいでしょ」と割と気軽な感じで夜勤シフトに入れられた。

 独身だからという言葉に少しだけもやついたが、かといって抗議に足りるだけの用事があるわけでもなく、なし崩しに決まってしまった。


(用事という用事がなくったって、家に帰る用事があるんですー!)

と言いたいところだけど、その後が面倒そうなので飲み込んだ。



 15時から23時まで食事休憩込みの8時間。


 夕方をすぎればお客様用のコールセンターは店じまいで、あとは支店同士の連絡が数時間に一度あるかないかという具合。


 前の時間の同僚から引き継ぎをしたら、事務課から回された書類整理で時間を潰す。

 24時間営業の窓口から不在通知を受け取って荷物を探して受け渡すのも、表の営業時間を過ぎてしまえばその数はぐっと減る。



 今日の勤務も、なべて平和なものである。

 22時を回ると次のシフトの同僚がやってきて、上司がいないのをいいことに世間話をしながらなんとなく手を動かして時間が経つのを待つ。


 そんなこんなして今日の勤務は終了、私はタイムカードを機械に突っ込んで同僚に手を振って家路に着く。




 帰り道、通勤路からほど近い飲み屋の並ぶ商店街でさつま揚げを数枚と、売れ残って半額になったうずらの卵フライを買った。

 透明なパックに入れられたそれらは袋の中でかさかさして、輪ゴムとこすれあってパチンと音を立てている。


 それからコンビニで度数の低いジュースみたいなチューハイを選ぶ。

 今日はぶどう味を選んだ。

 昨日も今日も、明日もあさってもぶどう味を選ぶだろうな。

 

 ガラス戸に映った私の顔はニコニコしていた。


 

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