第11話

「君は?」

服装からしたら、このカラオケボックスでアルバイトをしている子のようだ。


「失礼ながら、聴かせていただきました。

ぜひ、唄ってほしい曲があります。いいですか?」

仕事中にいいのか?

しかも、プライバシーの侵害になるぞ。


「あっ、かおりん、いらっしゃい」

妹の友達の1人が、バイトの子に声をかける。

「あっ、みんな来てたんだ。あっ、えみりん」

えみりんというのは、俺の妹の事。

正しくは、英美里という。

ちなみに苗字は、佐藤。

ありがちだ・・・


どうやら、香里ちゃんは、妹たちとはお友達のようだ。


なるほど・・・

そこで、ここに連れてきたのか・・・


「かおりん、この人は私のお兄ちゃんなの、よろしくね」

「そうなんだ、えみりんのお兄ちゃん、初めまして、私は福島香里です」

「初めまして。英美里が世話になってるね」

「いえ、こちらこそ。お兄ちゃんの事は、えみりんから訊いてます」

どうせ、ろくな事でもないだろう・・・


しかし、この子・・・

どこかで見たような・・・


「あのう、香里ちゃんとか、言ったよね?」

「はい。そうです」

「どこかで会ったことは・・・ないよね?」

「ええ、初めてです」

他人の空似か・・・


「で、唄って欲しい曲って?」

「忘れてました。いいですか?」

乗りかかった船だ、何なりと・・・


「『負けないで』を、お願いします」

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