章間話
新井結音、無事何事もなく退院しました。わーい。
「…………これで、よし。センスがないよね、才君もお姉ちゃんも」
木刀を私の部屋の壁に飾った。木刀には『月下美人』なんて銘が刻まれている。
……月下美人。木刀を送られたときは嫌がらせかなーって思ったけども、もしかして私を遠回しに褒めてたりしたのかな、才君は。
「あとは忘れちゃいけない、あの写真っ!」
勉強机の一番下の引き出し、二重底を外して鍵付きの箱を取り出した。中には勿論才君の弱みたるあの写真だ。才君に押し倒されている私がバッチリ写っている。
「ふふーん」
一度見て、私は戻した。なにも動かされた形跡がない。才君は勿論、お姉ちゃんも触ったりはしていないだろう。
ちなみに、アナログな隠し方なのは、下手にデータ化させてパソコンやら機械にちょっと強いお姉ちゃんなら盗る事くらい朝飯前だ。警戒もする。
じゃなきゃポラロイドカメラで撮ったりしないもん。
ともあれ写真は無事。才君は私の言うことには逆らえない。私の意のまま……。
「…………才君は、私のことどう思ってるのかな」
ちょっと気になる。かといってわざわざ命令してまで聞き出すことでもない。
そう、ワザワザ聞き出すことじゃない。
………………。
…………えっと。
ごめん、ほんとーは滅茶苦茶気になるけど、聞き出すのが結構怖いだけっぽい……。うわあ、私そんなハート弱かったかなぁ……。
「結音ー、はいるわよー」
「えっ!?」
「……そんなに驚くことかしら……?」
扉の向こうからとても不服そうなお姉ちゃんの声がする。慌てて扉を開けてお姉ちゃんを部屋に招く。
「えと、お姉ちゃんが私の部屋に来ようとすることなんてなかったから……つい?」
「そうね、確かに私は避けていたわ……ごめんなさい」
「あ、やっぱりそうなんだ。いいよ、別に気にしてないもん」
私は今お姉ちゃんに何言われても、気にしない精神状態でございます。
「ありがとう」
「どーも。で、何の用で来たの?」
「特には。強いて言うなら結音が心配で、かしらね」
「そっか……だいじょーぶだよ? ほら! この通り」
お姉ちゃんへ両手を突きだして見せる。まだ傷は残っていて包帯をしているけれど指をぱたぱた動かして、ついでにベッドの上で逆立ちした。傷に障りはないアピール。
「……ふふっ、そう? なら良かったわ」
多分お姉ちゃんが心配したのは心の方の傷だろうけど、それも平気だと思う。へーじょうしんですよ。お姉ちゃんの前ではそんな弱ってみせてもしょうがないし?
「あははっ、心配性だなぁ」
今のところ、命令で動いてくれる才君が居るから平気。
あの人は、きっとまた助けてくれるはずだから。
────翌週。
「才、君……?」
私は、才君が女の子からの手紙を受け取って校舎裏に呼び出されるところを目撃することになる。
……それは私の復讐とはまた、別のお話。
ユイちゃんには逆らえない! リョウゴ @Tiarith
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます