第16話
「食べ終わったー」
弥彦は、やっとの思いで夕飯を食べ終えて二階の自分の部屋に行こうと食器を台所に置いて扉を開けようとした。
「あれ、弥彦君?」
「はい?、あっ!、そうか」
弥彦は、美夕と舞花の父に名前を呼ばれてなんだろうと返事をすると「あっ、そうか」と、先程の美夕と舞花が出るドラマの出演の話しをすっかり忘れていた。
それを見た美夕と舞花は、「はぁー」と、弥彦の物忘れのひどさにため息をついた。
「こっちに来てくれないか、弥彦君」
「わかりました」
弥彦は、美夕と舞花の父が座っているソファの前に座った。
すると、美夕と舞花の父はバックをあさって五枚の書類と台本を出した。
「それでは弥彦君、ここに住所と電話番号とハンコを押すのとサインを書いてくれる?」
「はい」
弥彦は、書類に住所と電話番号を書いて、ハンコを押してフルネームでサインをした。
それを見ていた美夕と舞花は、嬉しそうにお茶を飲みながら弥彦の姿を見ていた。
そして、十五分ぐらいで書類は終わり、弥彦は「終わったー」と、床に寝そべった。
「ありがとう弥彦君、あっ、あとこれね」
「あー、台本ですね」
「あさっての日曜日の昼に撮影するから来てよー」
「どこに行けばいいんですか?」
「あー、言ってなかったな、幸田駅という場所で撮影するんだけど、朝に車で家に迎えに行くよ、真ん前だしね」
「わかりました」
弥彦は、場所も聞いたしこれで大丈夫だと思って安心した。
しかも、撮影場所までは車で行けるとのことなので、「ラッキー」と、ガッツポーズをして思いながら返事をした。
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