第5話

「自分が死んだあとの事を心配しているのかい?

大丈夫だよ。君の意識はないけれど家族はまだ息がある状態で君と会えるようにしてあげているから。君が死にそうっていう知らせ、よく言う『虫の知らせ』ってやつだね。それが伝わるようにしているから。家族や恋人など別れを惜しむ人たちがしっかりとお別れを言えるようにね。それは僕が自分の殺意以外で殺す時以外は必ずやるようにしているんだ。だって、やっぱり悲しいじゃない。死んだっていう知らせが突然来るのは。死んだっていう状態は希望も何もないからね。でも、死にそうっていう状態は話が違う。祈れば神様が助けてくれるかもしれない。名医が奇跡を起こしてくれるかもしれない。『○○かもしれない』という希望はやはり心理的に大きい。そこで思った事を伝え切れれば、多少は悲しみも和らぐでしょ?違うかな?僕はまだ身近な人の死を経験した事がないから想像でやっているだけなんだ。もし違うって君が言うなら、これからやり方を変えてあげないとって思うんだけど、どうかな?出来ればお互いにお別れを言わせてあげたいけど、それだと君を殺す事のハードルが高くなりすぎるから。僕は難しい殺人をしたいわけじゃないから、結局、この形にしたんだ。



なんだろう?最近は、凄い質問してくる人が増えたな。そのせいで、恐怖心をなるべく感じる前に処理してあげたいっていう僕の願いが達成しづらいなぁ。まぁ、君たちがそれを望んだ結果だから良いんだけど。これは皆んなと僕が約束している事なんだけど、まだ一度も約束を果たしてくれた人がいないんだ。だから君は絶対に約束を果たしてね。簡単だよ。あの世って場所がどんな所かを僕が現世で生きている間に伝えに来て欲しい。やり方は分からないから自力で探して。頼んだよ。どんな形でも良いから伝えてね。じゃあ、おやすみ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る