第3話

「いつからだったかな。

人を殺すことが、ご飯を食べること、友人とカフェで会話すること、寝ることと変わらない感覚になったのは。最初の殺人をする時はどうだったかって?人を殺そうと決めて殺す時は、あまり恐怖とかは感じなかったかな。だって、その時は純粋に殺意しか無かったからね。怖かったのは殺したあとかな。捕まって刑務所に入るとか将来の希望が無くなったみたいな些細な事ではないよ。殺意を果たしたあとに達成感を感じられるかなって思ったのに、何も感じなかったんだ。あぁ、僕って何をしても何も感じられない無気力な人間になっちゃったんだって思ったら急に怖くなったんだよ。だって、この先ただただ生きているだけなんだよ。楽しいとか悲しいとか、そういった感情が二度と自分には生まれないと思ったら生きていくのが怖くなるでしょ?分からない?まぁ、それも仕方ないか。

おっと、また僕の悪い癖が出ちゃったな。死ぬ時、相手に恐怖を与えることなく殺してあげたいと思ってるんだけど。ついつい自分の話をしちゃんだよね。もしかしたら僕の事を分かって欲しいって心の奥底では思っているのかも。でも、君も分かってくれそうにないね。そもそも死ぬ恐怖で僕の話が聞こえてないよね。最後にこれだけは覚えておいて。あの世って場所を僕はどうしても現世で生きている間に知りたいんだ。だから、なんとかしてあの世という場所を伝えられる方法を見つけて伝えに来てね。待ってるから。じゃあ、おやすみ」

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