2章 Bパート 少女は出会ってしまった。

2章 Bパート 1 CM明け

 亜久野恵里佳は自分で覚えている限り、小学校までは極普通の子供だった。他の子どもと同じように遊び、学び、子供時代を過ごしていた。母親はいない。それが死別なのか別れたのか、子供の時は特に考えもせずに父親に聞いてきたが一度も返答はもらっていない。いつしか聞くことも無くなっていた。


 身長はそのころから高く、性格は良く言えば活発。悪く言えばがさつ。女の子とも遊んでいたがそれと同じくらいに男の子とも遊んでいた。身体能力は男の子並みとは言わないがある方で、一緒にサッカーや野球をして楽しんだことも。生傷の絶えない子供時代だったが父親から特になにか言われたことはなかった。小学校までは。


 変化が起こり始めたのは中学2年生のころ。思い出してみれば変化と捉えていなかっただけで、1年のころから父親は今までと違う行動を起こしていた。その結果が悪の秘密結社の結成。それを打ち明けられて恵里佳は自分の耳を疑い言葉を繰り返して、頷く父親の行動と表情にそれが聞き間違いでも冗談でもなく、真剣な言葉だと受け取った。


「恵里佳。お前はいずれ私のあとを継いで首領となる身。そのための成長をしていきなさい、いいね」


 父からの言葉にそれまでの生き方を変えて凛々しく生きることを決意。時期的に生徒会長になるのは無理だったものの、卒業までに教師からも一目置かれる存在まで上り詰めた。それは高校に入学しても変わらない。1年の上半期のうちに時期生徒会長は確実なものだと言われるまでに。

「さすが私の娘だ。これならこの組織も未来も安泰だな」

 数カ月後に父はこの世を去った。


 組織を立ち上げ活動を継続させるために体を酷使しすぎた。恵里佳は父の位牌の前で固く誓った。父が成し得なかった組織の拡大。この世界を征服するという夢を自分の手で叶えると。いまこの組織には恵里佳の他に一人しかいない。その人物は恵里佳の父に組織の創立を進め、資金と知識を提供した。


「お父上の死は残念でした。しかし彼はあなたのためにここまで知識を残したのですよ」

 地下に秘密裏に作られていた工場には巨大な怪人が数体並んでいた。


「あなたの父上はそれはもう、私が驚くほどに秀才でした。もっと世間に評価されるべき人でした。しかしそうはならなかった。あなたがそれを広めるべきなのですよ」

 初老の男性は目を見開いて手を広げて

「あなたが! この組織が! 活躍をすればするほどに名声は広がります! その名声は何よりもお父上への手向けになるのです!」

 張り上げられた声が工場の中に響き渡る。

「私はお父上ほどではないが知識はありますゆえ、あなたの手助けをさせていただきます。これからもずっと」


 首領として活動を始めたのは数日後のこと。初老の男性の手によって外見が変えられた巨大な怪人が街に現れるが、政府が極秘に開発していた巨大ロボットが行く手を塞いで、暴れようとするたびに返り討ちにあってしまう。そんな日々が続く。

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