愛の欠片
篠宮
第1話
「ずっと前から消えてしまいたかった。」
彼女がこう言ってから何年経っただろうか。
あの頃の辛そうな顔を見たくはなかったものの、それでも、俺が病室に入るといつも彼女は、ふわりと笑う。そして、大好きな声で、俺の名前を呼ぶ。その笑顔と…その大好きな声は失いたくなかった。
何年たった今も、彼女は俺の中に鮮明に残っている。
俺は毎日欠かさず彼女の墓参りに来る。
お供え物にはプリンをおく。すると、またそれなの?と笑う君の声が聞こえた気がした。
「ねぇ、花言葉って知ってる?俺、最近ネットで見てさ〜」
俺に花言葉という言葉がどれほど似合わないことか。其れは俺自身が一番良く分かっている。でも、こういうのも偶にはいいんじゃない?なんて言い訳をしてみる。
「あ、やばっ。今日、この後用事あるんだっけ。ごめんね、長い事居られなくて。」
すると強い風が吹く。早く行きなさい。遅刻するんじゃないわよ。と、彼女が背中を押してくれた気がした。
「じゃあな!また明日来るから!」
そうして彼が走り去った後には、真っ赤な薔薇が一輪だけ、花瓶に挿さっていたのだった。
愛の欠片 篠宮 @shino_27
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
救いの手/篠宮
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます