笑う探偵

 私は探偵事務所を経営している藤牧マキ。

 ああ…推理小説の探偵を想像されても困る。あればお話、ファンタジー。推理したり 殺人トリックを見破ったり、ましては、殺人事件を解決したり。らじばんだり。したりしない。テレビドラマだと平気で探偵が、殺人現場に登場しているが、だいたい所轄の警官だって現場には入れないのだ。実際その場にいるのはエリート捜査一課様達だ。故に私立探偵が入る余地などない。よって探偵が推理で殺人事件を解決するのは、初手から不可能なのだ。ごめんなさい。サンタクロースはお父さんみたいな事を言って。既視感がある?意味の分からない事を言わないで。


 個人的には、殺人現場になんか行きたくもない。凄惨な現場を何度もみたら人生観変わるわ!トラウマになるわっ!コ○ン君殺人現場に居すぎ!何故トラウマにならない?


 現実の探偵は、地味なものだ。メインの仕事は、浮気調査。


 私はその何百件のケースを調査して思う。

 何故人は浮気をするのだろうか?見つからないとでも思っているのか?断言するが、見つからない浮気などない。専門家が本気になれば、90%で見つけられる。痕跡は必ず見つかるのだ。しかしこの仕事は時間をかけ、聴き込み、張り込み、危険だがおとり捜査もするそれらから集めた資料で浮気相手に浮気を認めさせるのだ。推理して解決するお手軽感はない…。地道でとにかくストレスが多い仕事だ危険も多い。


 私のそのストレス解消は近所のバッティングセンターで金属バットを振り回し軟球をしばく事だったのだが。そう、オーナーと仲良くなる位通っていたのだが。そこは最近潰れてしまった。私の憩いの場所が…。現在はゲームセンターが私の聖域。パンチングマシンをぶん殴る事で負の感情を発散している。


 それと今から一週間前までボクシングジムに通っていた。別にプロボクサーになりたいのではない。ダイエットを兼ねてトレーニングをしていたのだが。何故か、ジムのトレーナーにもうこないでくれと言われたのだ。全く意味が分からない。私は金を払っているお客様だぞ?断られる心当たりは皆無。そう言えば一緒に、スパーリングやっていたプロ目指してた子来なくなったな…。


 今日も仕事帰りパンチングマシンに八つ当たり。ああ殴りたい。殴りたい。


 ん?あれは甥っ子のアイナではないか。


「おい!ここだ!」


「…」


「ラインで呼び出しておいて無視とはいい度胸しているじゃないか…」


 浮気調査をして欲しいと書いてあったが、あの子付き合っていたんだね。身内の事だからあんまり大きな声で言うことでもないけれど仕事柄芸能事務所と関わる事もあるのだが、芸能界にもいないくらいの美人さんなんだよね。私は女だし、叔母だけれど、話すと少し緊張してしまうほどの。あんな子と釣り合う男なんているのか。ん?そいつが浮気しているのか?あの子を差し置いてなんだか奥底から沸き起こる新たな怒り!


「うりゃ!…ん?」


 なんだか騒がしいな…声のするほうをむくとUFOキャッチャーの筐体前でなんだか小さい男子学生ともめているようだ…。いつも冷静沈着なあの子が取り乱している…。


…面白そうだからしばらく観てよ。




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