修羅場

「浮気!?」


「どこに隠したの?あの健康色黒少女は!」


(疑い晴れていませんでした…)


「誰も隠していませんって!今来た所だから」


「うぅ…もう!コウちゃん!私本気で好きなんだよ!大好きなんだよ!分かってよっ!」


 そう言いながら泣き崩れる先輩。収集不能です。泣き崩れるって言葉は知っていましたが初めて目の前で見ました。


 座り込む彼女に、あたふたしていると。


「しょうがないわね!」


 ジャケットを片手にスーツ姿の茶髪ボブ美人が現れ。


「アイナ落ち着きなさい…」


 女性は、屈み込むと先輩の背中をさすった。


「う…うう…。叔母さん?…来るの遅い」


「人前でオバサンって言うのやめてって言ってるでしょ。」


「ぐすん…美人のマキお姉ちゃん」


「良くできました!」


 先輩の頭を撫でている。この二人知り合いなのか?


「落ち着いて来た?ああ。そうそうこのちびっこは、一人でさっき来たばかりだよ。見てたから」


「本当?」


「お姉ちゃんアイナに嘘ついた事ある?」


「ぐしゅん…ない」


 ようやく先輩は、落ち着いたようだ。


 それでは、わたくしは、おいとまを…。出口に向かおうとした。


「ちょ!待てよ!」


「はい?」


「…じゃなかった。ちょっと待ちなさい」


「あなた…ぷっ…アイナの彼氏…くす…なんだ…よね?」


 あの…今、鼻で笑いましたよね。俺を一瞥してから笑いましたよね!俺、今怒る所ですよねっ!


「泣いている彼女を置いてきぼりにするの?家に連れて帰りなさい」


「…はい」


鋭い目で見詰められそう答えるしかなかった。


「あなたは先輩の?」


「アイナに雇われた探偵よ。もしアイナに君がおいたしたら…」


「うぐっ」


頬っぺたをぎゅっとつねられた。


「痛っ」


そう、感じた瞬間。


彼女は、踵を返すとパンチングマシーンの前に立つと。


ドドガガーーーン


勢いよくサンドバッグが倒された。


「こうなるからね♪」


この世で一番怖い笑顔を見ました。




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