追跡×追跡

 幼なじみの寿司屋の息子只今逃亡中。


「…ん!げほ!げほ!ごほごほ!」


 グランドの砂ぼこりを浴びながら呆然と立ち尽くす俺。目も痛いし。最悪だな。野球部の練習をしているところまでは、アイツを確認していたのだのだが。部室で張っておくべきだった。


 どろんしやがった。


 グラウンドでじっと観ているのも…ファンじゃあるまいし、可笑しいので部活が終わる時間まで近所の公園のベンチで缶コーヒーを飲みながら、ケータイ小説を読んでいた。目の前を陸上部員達が走り抜けていった。


学園小説ってマラソン大会ぐらいでお話の盛り上がるピーク落ちますよね…気のせいですかね。


(よくあんなに走れるものだね…)


 この公園は広くマラソンコースがあるのだ。

 部活が終わると速攻で帰ったアイツはまだ元カノから逃げ回っているらしい。個人的には全く要はないのだが、先輩に野球坊主を文化祭のあの女子高との合同プロジェクト参加させよと依頼を受けてしまったからなぁ。手伝うと言った手前断れなかったのだ。


「なんであいつを探さねばならないんだ…」


 大きな独り言を言いいながら。


 あいつの行きそうな場所で追っ手から見つからない場所…。


「考えろ…あいつが行きそうな場所は…」


 俺は人探ししている探偵かっ…


 駅までの通学路をぶつぶつ独り言を言って歩いている内に最寄りの駅前広場に着いた。路上ミュージシャンが薄っぺらい恋の歌を唄っている。学生達はそれぞれのグループで円を描いてたむろしている者もいれば、スマホに夢中で外界を忘れ佇んでいる群れもいて。客観的に観ると異様な光景だ。スマホゲームをしているらしい。ほらあれだよ!ゲットだぜ!のゲーム。


「この中には…いないか…あいつガラケーだし…」


 いない…いないな!帰るか…。頑張ったよね俺。


 駅前広場を通りすぎ横断歩道を渡ると目の前は映画館も入っている百貨店のビルが建っている。その地下にはゲームセンターがあり、俺はいつものようにそのビルの地下へと階段を降ると、店の自動ドアを開けた。


「くそっ!誰なんだ!うりゃ!!」


 独り言を言いながらパンチングマシンをどついているヤバい女性が目に入った。


(怖い!怖い!)


 ああいうのに、関わりたくない。あれだよ。ワイドショーとかで報道しているあおり運転してくるDQNと同じ。ああいう連中は即刻捕まえて、免停にして、牢屋に入っていて欲しい。命に関わる犯罪だもの。


 俺も変な言いがかりつけられたらかなわない。目が合わないようにしなければ。


「コウちゃん!」


 左側から聞き覚えのある甘い声が…UFOキャッチャ筐体の辺りからから現れた彼女は少しお怒りのようでした。


(怖い!怖い!!)


「今晩は〰️」


「何遊んでいるの!誰と…」


「いやいやリョウタを探していたらここに来ちゃって…」


「違う!」


「?」


「…やっぱり!」


「はい?」


「う…」


「う?」


「ぅぅう…浮気してるんだねっ!」


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?」


 冤罪も甚だしかった。














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