怪人の嫉妬
「はぁ…」
深くため息をつく。
せっかくの休日なのに、さっきは何の時間だったんだ?恐ろしく無駄な時を費やしてしまった。時間は命なんだよ……ライフ削られたわ。痴話喧嘩は犬も食わない。
もう昼だよ…さて弁当を買いに、コンビニに行くか。腹が減った。猫缶をキッチンの棚の上から取ると缶切りで蓋を開け、中に入っていたサバを赤いプラスチックのフードボールに入れた。これで押入れニャ~ニャ~猫も、しばらくおとなしくしているだろう。
「…んんっ、ごほ…」
何だか息苦しい。右腕を学校の整列の一番前の情けない腰に手を当てるポーズみたいに腕を曲げ背中の肩甲骨辺りを親指で擦る。背中が硬くなってきている。それは喘息が起きる予兆だった。
財布と家の鍵をズボンのポケットに入れた。念のため吸入器も入れ。玄関の扉を開けた。
「やっぱりかよ…」
空は雨曇りだった。湿度が鬼高…こういう天気の日は体調が悪くなる。降りだす前にさっさとコンビニに行こうと扉を閉め鍵を掛けていると。
「 うわはっはっはっ! あけち…いやコウキ君!!」
(なんだ…この元ネタ昭和初期のキャラは…)
「げ…ゲームマスター!?」
一応乗って上げる俺は大人なのだ。
そこには、パーティーグッズ売場で売っている白い仮面とネイビーブルーの裏地がワインレッドのフード付きロングマントを着た不審者元い、
「ビックリしたっ!何ですか先輩…ゼニゲバ最低ユーチューバーみたいな仮面被って!」
いとおかしな白い怪人みたいな仮面を被っていても彼女だと分かった。こんなスーパーモデル体型の女子は、この辺りそうは現れない。生徒会室脱出ゲームと相変わらずの下手可愛い演技だ。
「うわはっはっはっ! 私はお前の先輩などではない!ゲームマスターだっ! 」
(きちんと否定した…まだ続けるんだ…)
「で何か用ですか?ゲームマスターさん!冷やかしなら近所迷惑なので今すぐにご自宅にお帰ってYouTubeでも観ていていただけますか!」
「うわはっはっはっ!さっき女の子がお前の家を訪問しただろう!…可愛いかったな!お前は健康的な褐色スポーツ女子が好みだったのだな!くぅ…あの子はお前のなんだ!言え!」
(くぅ?…あらら。やっぱり気付かれたか。隊長…玄関で騒ぎすぎ…)
「中学生の時の、同級生ですよ」
「随分長く話していたな!親しいのか?」
「幼なじみの彼女なんですよ。その幼なじみが、うちに来ているか、確認しに来ただけです。俺は大変迷惑だっただけで…」
「そうか!じゃ疚しい事は、ないんだな!過去現在未来!好きとか恋心は、皆無だな?」
(過去は、好きでした)
「ないですよ…」
「本当だよね!!」
そういって怪人は、抱きついてきました。
ぐぅ…
(お腹すいた)
この絵ずら。完全に怪人に、襲われてる感じなのだが…しかしいい匂いのする怪人だ。
ごほ…ごほごほごほごぼ!
ヤバい!こんな時に発作が…苦しい…吸入器を!ズボンのポケットの中をまさぐる。
「こうちゃん大丈夫!? 」
慌てた声の怪人…いや先輩。
「ごほっごほ…やっぱり…素顔のほうがいい…う」
仮面を脱いだ先輩の前で座り込んでしまった。
空気を読まない。発作だ。畜生っ!
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