保護者と解決①

 俺にできること、俺がしたいこと。俺が、七葉なのはにしてやれること。


 土曜日。向かう先は街のカフェ。コーヒーを飲みに来たわけじゃない。目的はそのカフェで待ち合わせをしていた人物だ。


 先に着いて席に座っていると、頭上から声をかけてきた。


「こんにちは。お待たせしました」


「こんにちは。俺も今来たところですよ、お父さん」


 そう、待ち合わせていたのは七葉の親父さん。


 七葉の学校から既に連絡を受けて、俺が本当の隣人であることも、俺と七葉が隠し撮りされたことも、知っている。だからもう、騙すようなことはしなくてもいい。


「まさか、貴方が本当のお隣さんだったとは……」


「嘘をついていてすみません」


「いいえ、七葉にそんな嘘をつかせてしまっていたのは僕の責任です」


 思っていたより穏やかだった。七葉の話を聞く限りでは、今日俺は無事では帰れないと思っていたんだが。


「今日来てもらったのは、誤解を解くためで……」


 少し緊張しながらも、今回の件の弁解をしようとした。


「わかっていますよ、なにも疚しいことはないことくらい」


「えっ……」


 でも弁解する前に、親父さんに遮られて。


「僕と妻は、仕事が忙しくて七葉に親らしいことをしてあげられなかったんです。だからあの子は幼い頃から僕らの気を引こうと悪戯ばかりで……」


「……七葉らしいですね」


 親父さんは懐かしみ微笑む。俺の知らない、昔の七葉。


「最近ずっと貴方の話ばかりするんです。その時の七葉が本当に楽しそうで……」


 どんな話をしているのか、少し気になるな。変なこと言ってねぇだろうなあいつ。


「正直親しくしているお隣さんが男性だと知って、親としては不安もあるんですよ」


 それは当然のことだろう。俺だって、自分に娘がいたとして、知らない男の家に入り浸っているなんて知ったら気が気じゃない。


「でもね、あの子が話している顔を見ていればわかるんですよ。貴方はきっと、七葉を家族のように大切に想ってくれている」


 どうなんだろうか。俺は、七葉をそんな風に想っているんだろうか。


 買い物に行くと七葉の分の食材も買う。帰りが遅いと大丈夫だろうかと考える。いつも帰ると「ただいま」と「おかえり」を言い合って、家を出るときは「いってらっしゃい」も「いってきます」だって言う。


 思い返してみて、それはもう言い逃れできないくらいにその言葉が似合っていて。


「お父さん、お願いがあります」


 いつも勝手に上がり込んできて、いつも一緒にご飯を食べて、いつも揶揄ってきて、そんな毎日にうんざりしているように格好をつけて。


 でも、もう俺は気付いている。


 俺はあの腹立つJKと居ることが楽しく思えていたことに。


「これからが七葉の学校に話し合いにいきますよね? そこに一緒に行かせてもらえませんか? 七葉のピンチなら、力になりたいんです」


 だから、行かなきゃ。いいや、俺が行きたいんだ。

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