第2話 それから、彼女と神社へ出かける。
◇◇◇◇◇
「んー……疲れたぁー」
「ちょっと休憩するか」
今日は十一月に入って最初の土曜日。
中間試験まではまだ三週間はあるけれど、今回は色々と思うところもあっていつもよりも早めにテスト対策を始めることにしたので、俺はかおりと二人、部屋の机に向かっていた。
「っていうか、まだテスト勉強始めるには早くない?」
「まあ、いつもよりは早いけどさ。こないだの期末試験は選挙期間と思いっきりかぶってたから全然勉強できなくて、結果も散々だったし」
「そう? 私は意外に出来たけど」
「……その前は俺に教えてくれって泣きついてきたくせに!」
本当にかおりは一度コツを掴んだらとことんできるようになるタイプで、前回の試験ではかなりの高得点だったようだった。そういえば中学校時代だって、少し教えればすぐにできるようになっていた。
一方の俺は、普段から授業もある程度聞いているしそれなりの点は取れるだろうと侮っていたこともあり、苦手な文系暗記科目を中心に大変な結果だった。
「そういえば最近、茜ちゃん忙しそうだね」
「もう来週が受験だからね」
「えっ⁉ そうなの⁉」
「推薦入試は早いからさ」
生徒会の選挙が終わって代が変わったくらいから茜は放課後の学校で毎日のように面接対策をやっている。それはきっと地元の国立大学に行くには推薦じゃないと厳しいということもあったんだろうが、そんな姉の姿を見せられると自分も勉強をしないとまずいんじゃないかとか思わされる。
前回の試験結果が振るわなかったということよりもむしろ、頑張る茜の気にあてられて勉強をしているという方が妥当なところなのかもしれない。
「そっか、もうそんな時期かー」
「高校生活だってもう残り半分もないしね」
「早いなぁ」
本当に、自分たちもすぐ受験生なのかということもそうだけれど、あと数か月で茜が卒業してしまうなんて、少し前までなら想像もできなかった。
もしもなにか部活動をやっていたら、早いところでは夏頃には自分たちが最高学年になって、そういう自覚も芽生えるんだろうけれど、生徒会で緩くやっている範囲ではあまりそういうこともない。
「茜ちゃんは今日も学校?」
「うん。進路指導の先生に面接見てもらってるはず」
「そっか……」
かおりは急になにかを考えるように俯いて、それからなにか良いことを思いついたとばかりに顔を上げる。
「そうだ。お守り買いに行こうよ! 茜ちゃんの合格祈願の!」
「いいけど……今から?」
かおりは俺の返事を聞くより先に立ち上がって、上着を羽織り始めた。一応初詣でそれなりに有名な神社が近くにはあるけど、正直あんまし外に出たい気分じゃない。今日は寒いし。
「思い立ったが吉日だよ、そうくん!」
「まあ、いいけどさ……」
…………勉強はまた明日やればいいか。
そんなふうに勝手に自分を納得させて俺も立ち上がり、クローゼットに手をかけた。
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