4章

第1話 それから、学校生活は変わっていく。

               ◇◇◇◇◇



「水瀬! おかげで美紅への誕生日プレゼント喜んでもらえたよ!」



 修学旅行も終わり、ほんの少しの余韻と焦燥感の漂う金曜日の放課後。生徒会室にいてくれと本田に言われて待っていると、俺たちに少し遅れて、奴はやってきた。


「そういえば昨日が彼女の誕生日だったんだっけ」

「そういえばって、忘れてたのかよ。ついこの前プレゼント選びに付き合ってもらったばっかなのに」


 そういえばそんなこともあったような気もする。


 修学旅行中の、特に三日目のインパクトが強すぎて、正直完全に忘れていた。


「今日朝からなんかそわそわしてたのってずっとこれが言いたかったの?」

「ま、まあそうだけど。相談にのってもらったんだから報告と礼はしっかりしないとだし」


 なんというかまあ、律義な奴だ。普段はバカっぽいのに結構友人関係が多いのは、こういうところが要因なのかもしれない。


「っていうか、それなら教室でこそっといってくれれば良かったのに」

「いや、こういう恋愛関係の相談はやっぱ生徒会室でするって決まってんだろ?」

「いや、だからそれ漫画の読み過ぎだって……」


 やっぱり本田はおバカだった。



「とっ、とにかく! 藤宮と佐藤も、親身に付き合ってくれてありがとな! じゃあ、美紅を待たせてるから行くわ!」


 強引に一方的な礼だけ言って、本田は早足で行ってしまう。


 俺たち三人は顔を見合わせて、それから荷物を持って玄関に向かった。



「あれ、佐藤って自転車通学じゃなかったっけ?」



 靴を履き替えて校門まで歩きながら、佐藤が駐輪場に向かわないので不思議に思って口に出す。


「あ、うん。今日から電車で通うことにしたの。ほら、来年にはもう受験生だし、そっちの方が勉強時間が確保できるでしょ?」

「あぁ……なるほど?」


 どこか意味ありげな佐藤の含み笑いに、隣を歩くかおりの頬がピクピクと動いたのを、俺は見逃さなかった。それどころかかおりは俺の左腕を引っ張るようにして腕を組んできている。


「佐藤さん、言っておくけど、電車通学になったってそうくんと偶然一緒になって二人で登下校なんてラッキーイベントは発生しないからね? 私がいる限り」

「分かってるよ。それに、偶然になんて期待してないから」


 少しとげのあるようなかおりの言葉に、佐藤はらしくない口調で、でもとても力強く切り返した。


 そして、俺の空いている右手をぎゅっと強く引き寄せて、言う。



「今度はもう、後悔しないから。欲しいものは自分で手繰り寄せるよ」


「――ッッ⁉ そうくんは絶対に渡さないから!」



 右に左にと体を大きく揺らされながら、これからの学校生活は一体どうなってしまうのかと、そんなことを考えていた。

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