第24話 そして修学旅行の夜は皆で集まる。

               ◇◇◇◇◇


「来たよー」

「ちょっと待ってー」


 先生の呼びかけに自室で応えてからすぐ、俺と亮がかおりたちの部屋に向かうと、佐藤と日向は先に揃っていた。部屋分けは男女で階が違うが基本的には班ごとの二人部屋なので、すぐ隣の部屋を割り振られていたらしい。


 かおりに扉を開けてもらい、亮と二人で中にお邪魔する。


「私、トランプ持ってきたけど何する? ババ抜き? 七並べ?」

「うーん……六人全員でトランプってきつくないかな?」


 メンバーが全員集まったところでリュックサックからトランプを取り出したかおりに、俺は素朴な疑問をぶつけた。


 っていうかそのリュック、お菓子以外にもちゃんとものが入っていたのか……。


「じゃあ半分ずつに分かれてやればいいんじゃないか? どうせ他にも誰か、トランプ持ってきてるだろ?」

「うん。そっちの方が良いかもね」


 確かにこういう泊まりのイベントごとと言ったら、なにも言われなくても二人に一人は何かしらを持ってきているはずだ。


 亮の提案に俺が頷くと、佐藤が手提げのバッグに手を突っ込んで何かを探し始める。


「あったあった。トランプはないけど、花札ならあるよ?」

「佐藤、部屋に集まる気満々だったんだな……」

「……それは言わないでよ、水瀬くん」


 トランプやウノではなく花札というところがなんとも佐藤らしい。


 どうやら彼女もこの修学旅行をずいぶんと楽しみにしていたようで、バッグから花札を取り出すと俺のツッコミに少し申し訳なさそうに笑った。


「じゃあ花札とトランプで三人ずつに分かれるとして……花札やりたい人、手挙げて」


 すっと、俺の問いかけに手が四本上がる。そのうちの一本は俺が自分で挙げているので、俺以外で花札希望は三人ということになる。


「えっと、じゃあジャンケンかな?」

「そうだね。一回勝負でいこっか!」


 佐藤と日向の発言で自然な流れでジャンケンをすることに。ちなみに亮と中野さんは仲良くトランプ支持派だった。あ、アメリカの話じゃないよ?



「最初はグー、ジャンケン――」



 「ぽんっ」と。


 勝負は本当に一回きりで決まった。



「え……」



 かおりの一人負けだった。みんながチョキを出している中、一人だけパーだった。


「……しょうがないよね」

「まあ、区切りの良いところで花札とトランプを交換するつもりだしさ。そんなに落ち込むことないよ」


 俺も花札はけっこう好きなので、かおりの気持ちも分かる。きっとさぞ花札をやりたかったんだろう。もうむしろトランプじゃなくて花札持ってくれば良かったのに。


「そういうことじゃない……」

「え?」


 小さく嘆いたかおりの声に一瞬、脳の活動が停止する。


 そういうことじゃないっていうのは、どういうこと?


「一区切りついたら、グループを分け直す。それならいいよ」 

「あ……」


 俺としたことが、鈍感主人公みたいな思考をしてしまっていた。俺と一緒にやりたかったと、ただ単にそういうことだったのか。


「じゃあ、そうしようか」

「うん。そうと決まったら早く始めよ!」


 みんなにアイコンタクトで了解を得て、俺は花札を、かおりはトランプでババ抜きを始める。



 あれ? 大貧民とかなら全員でできたんじゃ……。



 そう気づいたときにはもう言い出せる雰囲気でもなく、二度のメンバー替えで俺とかおりが同じグループになることはなかった。

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